イカルバンダイ

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 先輩の話を聞けば聞くほど、その風呂屋への興味は増すばかりだった。僕はその風呂屋をぜひ先輩に紹介して欲しいとお願いしたところ、仕事帰りに一緒に行ってもらえることになった。  先輩はもう何度も通っていると言うのだから、きっと先輩のやっている入浴ルールに従えば出禁になることはないのだろう。そう思い、先輩に尋ねた。 「そりゃお前、当たり前のことしかしてねぇよ。まず、タトゥーは無いだろ?長髪なら髪を縛る、ってか短いから俺らは関係ないし。あとは、風呂に入る前に掛け湯かシャワーを浴びる。湯尻から湯船に浸かって、湯口へ向かう。タオルは湯船に入れない。あと、騒がない、泳がない……って当たり前すぎるか。洗い場やサウナの場所取りをしない。他には、体を洗ったら風呂桶や椅子を元に戻す。脱衣所に戻る前にタオルで体の水気を拭き取る。くらいか?」 「え、普通じゃないっすか」 僕は思わず言ってしまった。 「な?普通だろ?でもな俺は思うんだが、おじさんのって所がポイントだと思うんだよ」 「と言いますと?」 「オナラがダメなんじゃないかと思うんだ」 「まさか……」 「それしか考えられねぇんだわ。きっと、風呂の中でブクブクって、オナラをした奴が一発アウトになると思うんだ。だから、芋とかお好み焼きとか、オナラが出やすくなる物はその日や前日には食うなよ?」 「楽勝っすね」  風呂屋を紹介された三日後、先輩と仕事帰りに立ち寄った。
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