イカルバンダイ

5/7
前へ
/7ページ
次へ
 先輩は気遣ってくれたのか、会員登録まで付き合ってくれたがその後は「1時間後にロビーで」とだけ言われ別行動になった。  受付を過ぎて少し歩くとロビーがあり、そこはマッサージ機やソファ、大型テレビに自動販売機などが設置された待合の場になっていた。ロビーには噂の番台があった。番台には例のおじさんが座っていて、何やら本を読んだり、たまにおじさんにしか見られない向きに置かれたモニターに目をやったりしていた。おじさんの第一印象は、物静かで優しそうな、白髪の老人だった。  ロビーの突き当たりにある大きな青い暖簾をくぐると、その中が男性の脱衣所になっている。脱衣所は広々としていて、鍵付きロッカーが縦に3つずつ、横には目算で20ほど並んでいるから、それが3列で、180台はあるのだろうか。  男性用の脱衣所にも洗面所がついていて、無料ドライヤーや綿棒、化粧水や乳液の試供品まで置いてあった。本当に350円で大丈夫なのか?と客ながらに心配になりつつも、充実した施設内容に僕はどんどん心を奪われていった。  服を脱ぎ、念のため脱いだ服を畳んでロッカーにしまい、鍵をして浴室内へ。先輩の姿はもう見えなかったから、きっと一足早く向かったのだろう。僕は脱衣所を色々見て回っていたため、出遅れてしまったようだ。  脱衣所と浴室の間には4畳ほどのガラス扉で挟まれた隔たりがあり、そこには棚と水飲み場が置いてあった。棚には客が持ち込んだ水筒やペットボトルが置いてある。サウナなど長居する人用なのだろうか。  喉は特に渇いていなかったが、何となく水を飲んでみた。子どもの頃、公園でよく飲んでいたタイプの水飲み場に似ていた。そして出てくる水の冷たさと言ったら。  喉を潤し、いざ浴室へ。  
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加