イカルバンダイ

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 何もしていない。僕は刺青もしていなければオナラもしていない。なんなんだ、何がいけなかったんだ。  洗い場を去る瞬間、自分が使っていた場所が目に入った。浴室のタイルは全てクリーム色だったはずが、僕が使っていた洗い場だけ、水を放水した跡のような形で水色に変色していた。  僕はハッとした。  長年の習慣で、善悪すらつかなくなっていた  子どもの入浴を禁止した理由、それも納得がいった。  きっと、犬並みの鼻と噂されるだけあり、おじさんにとってもだったのだ。    屈強な男たちに囲まれ頭が全く働かなくなり、これからの自分の身を案じることも、先輩につく言い訳も思いつつかなかった。  分かったのは、番台のおじさんの怒りの根源、この風呂屋の禁忌だけ。当たり前過ぎて、あえて温泉や銭湯に入るマナーにすら書かれていない僕の悪習。出禁になった僕らのアクシュウ。
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