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笑っているようないないような、どちらにも見えるお腹を見せてガラスの表面をはうように、薄暗がりの中を揺らぐエイの水槽を右手に、閉館後の館内を歩く。
静まり返ったフロアに、スニーカーのゴムをギュッとしたような私の足音が水槽のガラスに跳ね返っては響きわたる。
一箇所だけ照明のついたまま、波打っては光るペンギンプールの中を悠々と泳ぐジャスミン――つるんとした白いお腹をくねらせて水面に上がっていく姿を一人見つめる。
片山さんのことを想いながら――。
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