ジャスミンが泳げば

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 それからしばらくして、片山さんは水族館をやめた。  噂だと詳しい理由は何も言わず、ただやめさせてほしいとだけ館長に言ったそうだ。  あんなに熱心にペンギンたちのお世話をしていた片山さんが突然やめるなんて、私は信じられなかった。  閉館後に一緒に歩くことができず、話をすることもできず、ただ寂しくて、別れを告げさせてもらうこともできなかったのが、どこか恨めしく、複雑な気持ちで、私は毎日ジャスミンを見つめていた。  少ししてから、新しいペンギンの飼育員の人が採用された。館長独自のいくつかの特訓をクリアした私は、専門学校のコースを受けさせてもらえることになり、飼育員の補助として勉強することになった。まだまだ見習いだけど、ペンギン島に足を踏み入れることができると聞いた日の前夜はわくわくして、寝付けなかった。    それから二年ほどが過ぎ、相変わらず片山さんはどこにいるのか、何をしているのかもわからなかったが、勉強をしながら、毎日、ジャスミンや、目の前のペンギンたちのお世話をするのに必死だった。
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