1章:私は一般の中でも幸せな方なのだろう

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 そんな過去のあった私は、異性が横を通り過ぎるだけで肩が強張り肺が縮むような感覚に陥るようになった。父や弟でさえも暫くはダメだった。一緒の空間に居たくなくて、家に帰っても殆ど部屋にこもりきり状態。  そこでお母さんが私は男性恐怖症に陥っているから無理に治そうとせずゆっくり治していこう……てそっと抱きしめてくれた。その温かさにいっぱい涙が出て――……  ……――そんな、母の温もりで目が覚めた私は枕が濡れていることに気づいた。  これが、いってらっしゃいて旦那と別れることが出来る朝であればどれだけよかっただろう。  でも違った。  昨夜激しく求められて体の節々に痛みを感じていた私は料理の前に寝てしまっていたのだ。パートとはいえ仕事をしていた私は、子どもと一緒に帰ってきてそのまま一緒に昼寝をしてしまったのだ。やらなきゃいけない家事がたまっているから急がなきゃ、と起き上がった私に対し、現実は無情で。 「ただいま」  扉が開くと共に声がする。ふと子どもを見たら子どもはまだ寝ていたから起こさないように立ってふらつく足取りで「おかえり」と出迎えた。 「ゴメンね、ちょっと寝ちゃって。今からご飯作るから――」  私の言葉は途切れた。  背中には冷たい床。  玄関前でまた押し倒されていた。 「ねぇ、今日はごめん。やらなきゃいけない家事が……」  仕事で疲れていたし、やらなきゃいけない家事も本当にたまっていたから必死に押しのけたのにそれでもどいてくれなくて。  申し訳ないけど無理矢理押しのけようとしたら旦那の力が強すぎて押しのけられなくて、いや、私の手足が動かなかったのかな。がっちりと抱きしめて押し倒されていたから。  そうわかった瞬間、恐怖が襲って。  走馬灯のように駆け巡る恐怖に思わず涙がこぼれて「ごめん、今日は本当に」と情けないけど涙を零しながら言ったら、彼は私の頬を優しく拭って、瞳を覗き込んできて――笑って、言った。 「泣き顔って興奮するね」  ――そのあとのことは、もう、よく覚えていない。
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