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「あのね、本当に私のことを思ってくれるなら聞いてほしい。私にとって一番大切な友人が、男の子なの。異性。でも、私にとって大切で、大事で、出来れば人生が続く限り、寿命が続く限り友人でいたい人なの」
「……」
旦那は険しい表情をして言葉を発さない。黙って、私の言葉を聞いている。その沈黙が怖くて仕方ないが、でも私は構わず、怯まず、言葉を続ける。
この気持ちをぶつけるために、今、この時間を持っているのだから。
「受け入れがたいのはわかってる。既婚者なのに、異性の友達なんて、て後ろ指さされるだろうことだってわかってる。私だってそれはどうなんだって何度も自問自答した。……それでも私は、一緒に居たい。一緒に話し続けていたい。出来れば――この先ずっと同じ関係で居たい友人なの……」
泣くつもりなんてなかったのに、言葉の終わりが涙で滲む。
叶うならば。
心の手を繋いだまま。
手を合わせ、触れあっても友人として笑い合えるような、この今の距離のまま。
そんな友人がいたら、貴男のことも全部許せる気がするから。
例え過去に何かあったとしても。
これからあるのは未来しかないから。
「だから、だから……」
”この私の気持ちを受け入れて”
最後に告げた言葉は、旦那が発した言葉よりかすれて、弱弱しくて、自信のないものになってしまった。
しかも、折角目を合わせていたのに、私は逸らして俯いて言ってしまった。
これじゃダメなのに。今までの関係に逆戻りしてしまうのに。どうして私はこんなにも弱くて情けないのだろう? 押しつぶされそうになる心臓の音に、ぎゅっと唇を強くかむ。情けない自分へ心の罵倒を繰り返す。
「……た」
旦那が、何か言った。
私が顔を上げると、真剣な眼差しで私を見つめる桐が居た。
「わかった」
「え」
あっさりとした返答があまりにも信じられなくて私が目を見開いていると、私を真摯に見つめている旦那の瞳が一瞬、優し気に細められた。
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