最終章:旦那と私の距離

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「俺はお前を信じているからお前の言葉を信じる。だからどんな奴なのかとか詮索しない。お前が楽しければそれでいい。お前が必要なのだと思えばそれでいい。その友人を俺より優先されるのは悲しいけど……それでも、大事な友人なら、そのまま大切にしていればいい。そいつとお前の時間を俺も大切にするから」  言ってから、旦那はハッと「あ、すまん、お前、て呼ぶのもよくないよな。これは直す。高圧的だもんな。観音、てちゃんと名前で呼ぶ。すまん」という慌てた謝罪が付け足されたが、私は全く気にしてなんていなかった。それよりも、今、真正面から認められた言葉が嬉しくて、私は、頬に両手をそっとあてていた。  手に触れる涙の感触が、今の言葉が現実だと教えてくれた。  ああ。  ああ…… 「ああ……!」  色んなものを手に入れていて。誰もが羨むようなものが手の中にあって。さらに求めてしまう私は欲張りで高慢で我儘なのだと、心のどこかで思っていた。例え手に入れたものが私の心を壊してしまおうとも、それは我慢すべきことだったのではないのかと弱い自分を責める自分がずっとずっとどこかにいた。  だけど、ちゃんと言葉を交わせば、こうやって通じ合って、解決することが出来るんだ。  だから今私は、心の本当の支えをちゃんと手に入れられたのだ。  動けなくなった過去を塗りつぶせるぐらいのものが今ここにあるんだ。 「ありがとう……っ」  私の我儘で醜い希望がちゃんと認められたことが嬉しくて。  私は、今まで拒んでいた旦那を抱きしめた。
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