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まだ心が不安定だったのだろう。なんて面倒くさい思考なのだと思うのだが、そのぐしゃぐしゃなメンタルは自分自身じゃどうにもコントロールができない。この心を平和に保つためには、勇気を出した夜のように気持ちをぶつける以外私は方法を知らない。
――故に、私は。
私に駆け寄ってきた蒼君に開口一番こう言った。
「あのね、これからも友達でいてくれる?」
「何言ってんですか」
私の突然の言葉に、蒼君はボケた相手に突っ込む芸人のようなキレ味のある言葉を返してきた。あまりにも鋭くハキハキとしたキレッキレの返しに私が逆にびっくりして面食らっていると、蒼君の表情が崩れた。
「むしろこちらこそお願いします」
柔らかくて、優しい太陽の光のような笑顔の蒼君は。
さらに笑みを深めて目にも弧を描く。
あ、蒼君だ
私がしんどい時に思い浮かべていた彼だ、と認識すると同時に、私の心は柔らかく優しい毛布にゆっくりと包まれるように安堵が広がるのを感じた。そんな私をさらに安心させるかのように、蒼君は言葉を続ける。
「困ったことがあったら、力にはなれないかもですが僕なりの力で精一杯助けますよ。観音さんは僕の大切な友人ですから」
「……っ」
――ああっっ……っ
泣くつもりなんてなかったのに止まらない涙が憎らしい。
公共の場で、横を通っていく人がこちらを訝し気に見ているのを肌で感じて止めなきゃいけないとわかっているのに止まってくれない。まさかここまで望む言葉が返ってくるとは思わなかった私は、不意打ちを食らって銃弾で撃ち抜かれたかのように感情の洪水で頬が濡れるのを止められなかった。
君が好きでたまらないこの想いは間違ってなかったんだと確信した心が、感情を急加速させて止まらない。
――大好き
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