最終章:旦那と私の距離

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 でも、これは恋愛じゃない。  決して恋ではない。  心から信じてもいいんだと知った安堵感であって恋愛じゃない。  それが私たち2人の間で同じ気持ちとして繋がった関係だとわかるからこそ私の涙は止まらない。  これは、信頼の愛だ。  友情の愛だ。  だから蒼君は目の前で照れながら、でも私を真っ直ぐ見ながら「大切な友人」と言ったんだ。優しい顔は、親しい友人を見る温かな目で間違いなくて、それがたまらなく嬉しい私は呼吸の仕方を忘れそうなほど頬を濡らした。こんなに泣いてちゃ蒼君が困っちゃうと心の奥底ではわかっているのに。  けど、蒼君は決して私を責めなかった。 「泣きたいときはいっぱい泣いといていいんですよ。今までいっぱい苦労した観音さんはそれを許される人なんですから」と笑って、私の気持ちが落ち着くのを一歩開けた距離のままにこやかに待ってくれていた。  その距離と表情の温度が私にとってどれだけ嬉しいか、君はきっと知らないでしょう? 「まぁこんな言葉は何の慰めにもなってなくて、ただ綺麗ごとでしかないかもしれないですけど。でも、綺麗ごとばかり言うのもありじゃないかなと思いまして。だから僕は観音さんのために綺麗ごとを言い続けようと思います。なので泣いていいですと言います。あ、でも泣き終わったら僕を待たせた罪悪感から甘くておいしいものを奢ってくれるだろうことを期待するぐらいはいいですよね?」  私が欲しい言葉をさらに繰り返し言った後にちょっとおどけてリクエストをする優しさに、私は笑いたいのに嬉しさで涙が止まらなかった。どこまで私のことを把握しているのだろう、この子は。もしかして心を読めるんじゃないだろうか?   ああ、この嬉しいのに止まらない涙を嬉し涙と言うのだろうな。  そんなことを実感しながら私はタオルで目や鼻を覆いながら「フフ」と息を漏らす。 「もう、大好き」  ふいに漏れた言葉に蒼君は少し驚いた様子を見せたが、すぐに「ふはっ」と嬉しそうに表情を崩した。 「ハハ、僕もですよー」  そう言っていつもの温かな笑顔で返す君が愛おしくて、たまらなく好きで、本当もう大好きって、私は心の底から泣いて、笑った。
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