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エピローグ
一通りの四季をめぐって、一つ年を取った私は。
今日もまたいつもの駅の改札前で大切な友人と待ち合わせをして、見慣れた街道を手を繋がない距離で歩いて、恒例となったランチの場所を決める会話を和やかに交わしていた。
「今日はどこ食べに行きます?」
まず最初に話を振ったのは少し身長が伸びた蒼君だ。出会った頃は目線が合うぐらいだったのに、今は少し見上げなければならない。男性はいくつ年をとっても成長するものなのだろうかと小さな感動を覚えながら、唯一慣れていない身長差に戸惑っていないフリで彼の額の方を見つめながら「ん-、たまには女子会みたいなカフェ行きたい」と、出来れば前の身長の時に行ってみたかった所を口にした。
「いいですね。男一人じゃ行けませんし、僕甘いもの好きなので」
「じゃ、決まり。あ、そうだ、折角だし気分をそれっぽくするためにスカートとか履く?」
名案、とばかりに私が手をポンっと叩くと蒼君の表情が途端に険しくなった。
「それは全力でお断りいたします。例え奢ると言われてもむしろ僕が奢りますから辞めてくださいと懇願します。それでもダメならいっそそういうお店をつぶすための作戦を練りに練ってどうにかして阻止します。いやそんなことするより全力でこの場からダッシュで逃げる方がいいですね。なので全力でダッシュして逃げます。でもできればカフェは行きたいので観音さん、全力で諦めてください」
「ちょ……っ、ぶ、フフ、アハハハハハ! そんな勢いよく否定されるとは、いやまぁ、否定するとは思ったけど、勢いが……アハハハハハ!」
「……結構必死だったのですが?」
「うん、伝わった。早口否定にすごく伝わった、けど……フフ、ウハハハハハ」
「笑い過ぎじゃありません?」
「ご、ごめ……ヒヒヒヒっ」
「あ、これダメなやつ。ツボに入ったやつですね。うん、とりあえずそこの喫茶店で落ち着きます?」
「アハハハ! ッッ、フフ、フフフフ」
「うん、入りましょう。観音さん、今日は喫茶店ご飯にしましょう」
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