エピローグ

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 どれだけ旦那の中で性欲が溜まっていたとしても、旦那は私の疲労状況を見て「今日は頑張って我慢します」と辛そうな顔をしながらぐっとこらえてくれるようになったからだ。ちゃんと話し合ってこういった結果が得られるのなら、思った時にちゃんと言うべきだったと私は、今、過去の日々を後悔している。ちゃんと言わないからすれ違っていた部分が大いにあったのだと、今の日々に気付かされていた。  でもこれも全て、私が本当に生きてられない程息苦しい時に、蒼君が私を大切といって優しい笑顔で支えてくれたからこそある今だ。弱弱しくなってしまう私に、綺麗事を並べて励まし続けてくれた蒼君が、私の辛い時に電話にすぐ出てくれて、私の心をいつまでも待つと、真っ直ぐ言ってくれたからだ。 「はあぁぁぁぁ……あー、笑った笑った」 「いや笑いすぎですから。おかげさまで今日も喫茶店です」 「最早常連になってきたんじゃない?」 「僕コーヒー苦手なのに」 「レッツチャレンジ、キャラメルラテ!」 「あ、すみません、甘いミックスジュース一つお願いします」 「ナチュラルに無視! ひどい、お姉さん泣いちゃう! 女の子泣かせて心が痛まないの!?」 「女の子はいませんが、立派な大人の女性は目の前にいますね」 「うっわーお、そんなことさらっと言ってくれるの!? お姉さん流石に今のはちょっとときめいちゃったわ」 「……やっぱり観音さんは天然でとても話しやすいですね」 「あれ、もしかして私実は褒められてなかった?」 「いえ、褒めましたよ。はい。観音さんはそれはそれは立派な大人の女性です。子育てや仕事に追われて毎日大変な中本当に凄いなと思っています」 「でしょでしょ? じゃあ是非こんな私にぴったりのドリンクを蒼君にチョイスしてもらおうかな?」 「はいでは、すみません、このお店で一番苦い珈琲を一つ」 「それは無理ぃいいいいい! 甘いカフェオレに訂正お願いします!」  このやりとりが漫才じみていてたのだろう。所々で周りのお客さんが「ブハッ」と吹く音が会話の途中何度か聞こえていた。その音が、私たちのこの関係を「そのままでいいよ」と許してくれているようで、嬉しくてたまらなくなっている私がひっそりといた。
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