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『大好き』
名前のない感情とこの言葉はきっと、私と君との間だけにしかない宝物だ。
いや、もう、こんな言葉はいらないほど、私たちの心はきっと、繋がっているのだろう。
いつものように軽い食事を終えて、ゲームや日常の話に花を咲かせた私たちの時間はいつもあっという間に過ぎていく。気づけば、もう夕暮れ時になっていた。
「それじゃあこれで」
「はい」
私が手を上げたら、徐に手を上げてくれた君。このまま手を振るのが普通の流れだろう。
だけど私は何を思ったか一歩踏み出して近づいて。
「またね」
また会いたいを込めて彼の手に私の手を重ねるように、だけど少し力をこめて――
ぱち、と、合わせた。
優しい、ハイタッチ
一瞬の触れ合い
ただそれだけ、なのに
心がかちりと触れ合えた気がした私は嬉しくなって笑った。
同じだったのか、一瞬驚いた様子だったけど蒼君も笑った。
「はい、また」
その言葉と共に、私と同じようにパチ、と手を合わせて。
私たちだけしか可能にできない優しい触れ合いを、した。
ああ
君に会えて、良かった
掌から伝わる温もりに私は視界を細めて、君を見る。
どん底に沈んだ私の心を明るい所へと掬い上げてくれた私の救世主。
私の大事なゲーム仲間であり、私の大切な話し相手である君は。
大好きな大好きな、私の友人だ。
fin
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