1章:私は一般の中でも幸せな方なのだろう

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 私は学生時代一度男性恐怖症に陥ったことがあった。  ……あれほど、自分の好奇心を恨んだことはない。  高校生の時、仲の良かった子が突然孤立した。理由の知らない私は周りの人たちから「あの子には近づかないほうがいい」とイジメ漫画とかにある典型的なセリフを言われて動揺した。理由を皆に尋ねたが「皆が言うから」とこれまた典型的な台詞で……自分の目で確かめないと気が済まない私は孤立している友人から離れなかった。   「観音(みね)は優しいね」  そう言って涙を溜めて笑う友人を見て、私は自分が正しかったと感じた。そう、思い込んでしまった。  まぁ……結果的に。他の人たちの言葉が正しかったんだけどね。  孤立した友人はヤンキーと絡んでいた。これも吃驚、漫画とかで見たことあるような典型的なヤンキーだったんだよね。しかも女子高生を食い物にする系の。その孤立した友達はヤンキー複数と何度も夜を共にし、その中の1人と付き合っていた。そして友人はリーダーの人に命令されたらしい。 『可愛い子1人連れてきな』  一度目じゃあ警戒されるからある程度好意を寄せさせてから食う、ていう計画だったらしい。らしい、と私が言えるのは、1回目は本当にただただいい人たちだったんだ。友人と一緒なら、と友人の彼氏の車に乗って向かった先はキャンプ場。仲のいい男女が入り混じりながらわいわいとご飯を食べて花火をするだけだった。主にリーダー格の家族が居て、おばさんやお姉さんも多かったから私の警戒も解けた。次はカラオケ行こうかって話の時に私は門限だからって帰ることにした。本当に、帰って正解だった。車で送ってもらう時……何故か私の席にピーって音がつきそうな本が見えやすい所にどーんと置いてあったのだ。一気に背筋が寒くなった私が急いでひっくり返して見えないようにするのを見つけたリーダー格が隣に来て囁いたのを覚えてる。 「興味ある?」  耳にかかる煙草交じりの息は私を不快にするには充分だった。
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