1章:私は一般の中でも幸せな方なのだろう

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 それでも幼い私は、そのヤンキーたちをかっこよくて優しいお兄さんたちってイメージが抜けなかった。警戒して近所のコンビニに降ろしてもらう時に「最低!」と叫んですごく失礼な態度をとった、けど、後から子どもみたいに反応しちゃった自分が恥ずかしいなって反省して次会う時は謝ろうと思っていたのだ。  でも、2回目は訪れなかった。  理由は2つ。  1つは、帰宅したら母が私を見て青ざめたこと。  凄く煙草臭かったらしい。私が煙草の匂い嫌いだから明らかに不自然だったんだって。何があったのって詰め寄られてビックリしながらもありのままを話したらお母さんに頬を叩かれた。  訳も分からないし痛いしで涙が出てきて、文句を言おうとしたら先にお母さんが泣いた。 「貴女は可愛いのよ!」  まさか母から、あんなに悲痛な泣き顔で自分の容姿を褒められる日が来るとは思わなかった。本当にびっくりした。  母にあんな風に泣かれたのならと私は友人に「皆でいこうね」と最後に約束したカラオケの話を断った。学校でその話をした私に、友人は豹変した。 「なんで!? 楽しかったでしょ!?」  私の両腕を掴んで揺さぶる姿はまるで鬼のような顔をしていて怖くて「お母さんが……」て理由をもう一度言おうとしたら友人は言ったんだ。 「私が殴られるじゃない! 折角可愛い観音(みね)釣れたのに!」  ……絶交するには、充分威力のある言葉だった。  これが、2つ目の理由。  絶交した後は、噂で『かわいい子に声をかけては連れてこうとする』て他の人から聞いた。噂は噂って言うけど、火のない所に煙は立たぬっていうのは……本当だね。
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