G's(ジイズ)

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 数年のうちに、ジイズは周辺地域で有名なグループとなっていました。メンバーがそれぞれの専門知識や技術を活かし、かつての戦乱によって疲弊したこの国で、貧しい人々のために奉仕活動を行っているのです。  ポチとご主人様は戦争時に埋設され、あるいは空中からばら撒かれた地雷の撤去作業を続けています。ポチの鋭い嗅覚を使って地中の地雷を探り当て、地雷除去の専門チームへ位置情報を提供するのです。  ジイズのある者は現地で診療所を開業し、またある者は日本とこの国を何度も往復して支援を募っています。彼らの活動は当初、かなり限定された地域で行われていました。ですが数年経った現在では、世界に広く知られる存在となっています。  日本からの映像がスクリーンに映し出されました。ポチが可愛がっていた坊ちゃんは小学生になっています。学校で祖父の活動を紹介することになり、動画で生中継が行われているのです。ご主人様も、他のジイズのメンバーも、今日は晴れ晴れとした顔で故郷の子供達からの質問に答えていました。  最後に、坊ちゃんが作文を読み上げることになりました。原稿用紙2枚ほどの作文の途中で、ジイズの一行は干からびてしまうのではないかと思うほど泣き始めます。ポチが見たところ、ご主人様だけは懸命に涙をこらえ、目尻にシワを寄せていました。 「……僕はおじいちゃんのことが、とっても自慢です。おじいちゃん、遠く離れて寂しいけれど、がんばって。 ……おしまい」  ご主人様の目から一粒、涙がこぼれ落ちました。涙からは、「孫の成長が嬉しい」という喜びとともに、孫に「帰ってこないで」と遠回しに言われた悲しみの匂いが嗅ぎ取れます。落ちた涙が土の床に吸い込まれると、ご主人の体がなんだか透き通り、淡い光を発したように見えました。 「今日も仕事だ。行くぞ、ポチ」  中継が終わり、朝食を済ませると、ご主人はいつものように声をかけました。
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