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帰宅すると僕は、向山さんの連絡先を知るために里中の手を借りた。僕の勘が正しければ、一年の時、向山さんはあの二人と同じクラスのはずだ。
里中にはさんざん勘ぐられ、冷やかされた。そんなんじゃないのに。
やはり慣れないことはするものではない。
けれどその甲斐はあった。
翌日。
「北条さん」
「あら、佐藤くん。こんなところで油売ってていいの?合唱の練習は?」
「北条さんの、あの言葉の意味がわかったんだ」
「なんのことかしら?」
「死ぬほど歌いたくない」
「ああ。言葉通りの意味よ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
「進藤さんのこと。委員長から聞いたんだ。同じクラスだったよね。一年の時」
北条さんは何も言わずに腕を組んで、僕を睨む。
「一年の時の合唱祭。進藤さんのミスで合唱が上手くいかなかった。その事を気に病んで進藤さんはピアノをやめた。北条さんもそれ責任感じて、歌うのやめたんじゃない?」
「案外、彼女もおしゃべりね」
「北条さんのことは何も聞いてない。僕が聞いたのは進藤さんのことだけ」
「どっちにしても同じことじゃない。思い出したくない人の過去詮索して、なんなの?ほっといてよ!」
「ほっとけなくなった」
「どうして?!」
それは……
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