二回目の金曜日・1

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二回目の金曜日・1

 金曜日の居酒屋は賑やかだ。休日前、という客で溢れかえっている。事前に予約していたおかげで店に入れないという事もなく、久方ぶりの友人達との逢瀬は楽しい物になるはずであった。だと言うのに、今の晴香は正直それどころでは無い。 「ごめんね晴香」  友人の一人がそう耳打ちをしてくるのに対し、晴香はグラスに口を付けたまま大丈夫だよと首を横に振る。  学生時代に特に仲の良かった五人での飲み会は、一人が遅れてくると言う連絡から始まった。店にいられる時間は二時間だが、その間に来られなかったら別の店で二次会でもしようか、と話していれば隣の席に似た数の客が入ってきた。それがまさかの友人の職場の先輩や同僚で、そのままなし崩し的に一緒に飲む羽目に。いくら親しくない人間と飲み食いするのが好きでは無いとは言えそこは晴香も社会人だ。適当に会話を交わして流すくらいの事はする。席は元から壁際なのもあり、あまり向こうの席とも絡まないので、軽く挨拶する程度で済んだ。後はこちらはこちらで盛り上がろうと思った矢先、遅れて相手側の面子が増えたのだがそれがまさかの相手だった。 「飯島じゃん……!」  ボソッと呟く友人の声に誰だっけ? と首を捻れば「あんたの元彼!」と脇を肘で突かれた。痛い、と摩りながらもああなんだかそんな名前だったなと思った自分が我ながら酷い。本当にあの人のことちゃんと好きじゃなかったんだなあ、と改めて痛感する。    多分きっと先輩のことはこれから先どうなっても忘れたりはしないんだろうけど、などと小っ恥ずかしい考えが頭を過り晴香は慌ててそれを頭から追い出す。やばい恥ずかしいなにそんな少女漫画みたいな、と気を落ち着かせようとグラスを手に取る。ゴクゴクと冷たいウーロン茶を飲めば気も落ち着いてくるはず、が、ボンと浮かんだ言葉に堪らず中身を吹き出した。 「晴香大丈夫!?」 「てかなんで飯島がいるの!? あいつうちの会社と関係ないんだけど!?」  そう言って友人がそれとなく相手側の面子に確認してくると、あちらはあちらで友人関係での集まりだったらしい。そこに職場の関係者が多かっただけの話だ。なんというタイミングの悪さか。  友人達は晴香が元彼の登場に動揺していると思ったのか極力関わらない様に壁を作ってくれる。ただでさえ無関係の人間と同席する羽目になったのを申し訳なく思っていた友人は特に態度が厳しい。チラチラとこちらを見てくる元彼を容赦なく睨み付けて威嚇してくれている。別れるに至った話を皆知っているのだから当然だ。友情ってありがたい、と心の中で感謝しつつ同時に晴香は土下座の勢いで詫びる。  今動揺しているのは元彼が原因では無い。全く、これっぽちも関係無かった。
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