二回目の金曜日・1

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ーー日吉ちゃん、あんまり葛城を信用しすぎない方がいいからね?  中条の言葉に晴香は「え?」と短く返した。むしろそれしか言葉が出ない。何故そんな事を言うのだろうかと心底不思議でならないのだが、そんな晴香を見て中条は口元に手を押し当て軽く咳払いをする。肩が微かに震えているので、これはまあ吹き出しそうになったのを無理矢理誤魔化しているのだろう。 「中条先輩?」 「うん、ごめん……日吉ちゃんそんな顔しないで」  クックと笑いを堪えきれないらしい。そんな顔ってどんな顔? と晴香はますます不思議でならないが、中条は数回呼吸を繰り返す内に笑いを治めたのかテーブル越しではあるけれども晴香に体を近付けてきた。 「葛城のこと悪く言われたと思ったでしょ?」 「あー……ええと、それは」  あんまり葛城を信用しすぎない方がいい、そう言ったのは中条で、中条は葛城の同期であり友人で、そんな人がどうして先輩のことを悪く言うのかと不思議であると同時に腹立たしかった。 「日吉ちゃんも相当葛城のこと好きだよね」 「ちが……っわ、ないですけどでもそれはあくまで職場の先輩としてですよ!」 「おれは好きだよね、ってしか言ってないけどなー」 「中条先輩その顔とても非常に最高にむかっ腹が立ちます」 「ああごめんね、からかうつもりはないんだ。それより話を戻すけどさ」 「先輩は」 「信用できるよね。おれもそう思ってるよ」 「だったらどうして」 「ただおれが今言ってるのは普段のそういうのじゃなくて」 「そういうのじゃなくて?」  言われている意味が分からず素直に問い直すが、途端に中条は視線を彷徨わせ始めた。いや言い出したのはそちらですよね、と思わず突っ込みそうになるがそれを堪えて晴香は待つ。 「日吉ちゃん視線が痛い」 「……中条先輩がもったいぶるから」 「もったいぶってるわけじゃないんだけど」  うあー、と中条は気まずそうに頭の後ろをバリバリと掻く。そういや先週の金曜の先輩もなんだかこんな感じの時があったな? と晴香はふと思い出した。思い出した所で目の前の中条の謎の動きの答えが浮かぶわけではないけれども。 「あのね」 「はい」 「ううん真っ直ぐ素直だな!? そりゃ葛城も……」 「中条先輩話が長いって言われませんか?」  語尾がごにょごにょと消える中条に、晴香は素直な気持ちをぶつける。あ、これいつも葛城が喰らってるやつだ、と中条はテーブルの上に片肘を付いてどうにか耐えた。 「その課長の朝礼での無駄話みたいな言い方やめてくれる!? わりと傷つくからね?」 「うちの課長そんな無駄話しないじゃないですか」 「物の例えだしそこで課長を否定しておれをそのままってのより一層傷つくかな!」 「中条先輩」 「うん」 「話を戻しましょう」  だよね、と中条は頷いた。手元にあった水の入ったグラスを一口飲むと、晴香に再度向き直る。
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