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「日吉ちゃんが思っている通り葛城は信頼に値する人間だからさ、絶対に日吉ちゃんを傷つけたり酷いことをしたりはしない」
「先輩にひどい目に遭わされたの最初の頃だけですもんね」
「さらりと挟むよねー……でもその通り。あれはでも葛城も限界中の限界だったから、そこは本当にごめん」
「中条先輩が謝ることでは」
「葛城があんな風になるまで助けられなかったし、その直撃を受ける日吉ちゃんを上手くフォローできてなかったでしょ」
「でも話を聞いてくれようとしたり、おやつ貰ったりしたのでわたしはそれだけでも嬉しかったです」
「餌付けが成功するまでも時間かかったけどね。けどおかげで日吉ちゃんが少しは懐いてくれたのは嬉しかったよ」
「人をそうやって動物みたいに言うのはですよ。いかがなものかとですね?」
「野生の小動物みたいで可愛いねって話」
「ええー……ってまあいいですまた話がそれました中条先輩」
「そうだねごめん」
話を振ってきたのは中条であるものの、その続きを言うのが憚られるのか流れるように話が反れて行く。これでは当の本人である葛城が戻って来てしまうのではなかろうか。つい外の様子を伺ってしまう。
「日吉ちゃんとの最初の頃はイレギュラー中のイレギュラーだからとりあえず置いておいてほしいんだけど。葛城は基本的に自分の感情をコントロールするのが上手いんだよ。上手いって言うか……こう、と決めたらそれを貫くと言うか」
「それは分かります。営業目標決めたらなにがなんでもクリアするし、先輩それ無茶では案件も物にするし」
「耐える所は耐えて、動く時は動く」
そうそう、と晴香は大きく頷く。そんな晴香に「だからね」と中条は少しばかり声のトーンを抑えて言葉を続けた。
「日吉ちゃんに手を出すのも今は我慢してるけど、出すって決めたら日吉ちゃんがどんなに恥ずかしがっても止めないからね、てのを言いたかったんだ」
「――え」
「さすがに本気で嫌がったり、それこそ泣いたりしたらそれは止めるよ! そこは大丈夫! 大丈夫、ってのもヘンだけど!!」
「……あ」
「でもそうじゃない限りはなんて言うかもうぶっちゃけると最後までヤると思うってかヤるから。むしろあれだけ日吉ちゃんのこと好きでいるくせによく耐えてるなって、修行僧かな? って思うよね」
「ああああああのですね中条先輩!」
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