二回目の金曜日・2

1/14
前へ
/198ページ
次へ

二回目の金曜日・2

 背中にドアが激しくぶつかるが、後頭部には葛城の手が回されていたおかげで痛みはなかった。しかしその為に顔を動かす事ができない。顔どころか、膝の間には葛城の脚が入り込みこちらも身動きを取るのは不可能だ。  逃げ場がない、そう思う間があっただろうか。ぐ、と顎を押し上げられ唇を塞がれる。驚きに身を竦め反射的に口を硬く閉ざすが、そこを無理矢理こじ開けて葛城の舌が入ってきた。 「んっ……!?」  多くはないけれども、それでも何度かは交わした口付け。けれどこれは初めてだった。こんなにも激しく腔内を貪られた事はない。今までのでも晴香としては堪ったものではなかったけれど、それでもあれは手加減されていたのだと嫌でも思い知る。奥の奥まで葛城の舌に蹂躙される。息継ぎも、自分の唾液を飲み込む暇すらない。後頭部にあった左手と顎を持ち上げていた右手はいつの間にか晴香の両耳を塞いでいる。外からの音は聞こえず、ただひたすら舌が交わる音だけが晴香の鼓膜を揺らす。その淫らな音色により一層羞恥と官能を煽られ、晴香の膝はガクガクと震え始めた。微かに体が下がると、脚の間にある膝が必然的に一番敏感な場所へ触れる。 「ぁあッ!」  葛城が膝頭でソコを刺激すると晴香は盛大に体を震わせた。弾みで唇がずれ、甘い啼き声が玄関に響く。そうだ、ここはまだ玄関、と晴香は一瞬正気を取り戻すがすぐにまた口を塞がれる。奥に逃げた舌を絡め取られ、逆に葛城の口の中へと引きずり込まれた。かと思えば、舌の裏側を優しく撫でられ、唇で食まれ、じゅ、と音を立てて美味しそうに啜られる。  まるごと食らい尽くす様な口付けに正気は見る間に奪われていく。代わりに快楽が深く刻まれるが、一度正気に戻った為に晴香はそれになんとか抗う。こうなる事が嫌なのではない。ただ場所がさすがにマズいと言うか、このままではここで最後までされてしまうのではないかと、それはいくらなんでもちょっと、と晴香は懸命に葛城の背中を叩く。しかし葛城は止まってくれない。口の中と膝の動きが激しさを増し、晴香に無駄な抵抗は止めろと直接体に訴えてくる。  本当に先輩待って、と晴香が息苦しさとそれを超える気持ちよさに押し流されそうになるのをどうにか耐えていると、葛城の左手が不意に動いた。右手は相変わらず晴香の片耳を押さえたままで、片手が離れた分逃がすものかと上半身で押さえてくる。その間に離れた左手が何をしているかと言えば、玄関の鍵を掛けチェーンまで嵌めている。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

670人が本棚に入れています
本棚に追加