二回目の金曜日・2

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 噛み跡を辿るかのように執拗にそこを舐めて吸い付くと、晴香は何度も短い悲鳴を上げる。その声に合わせて背中も跳ねるが、葛城が上半身を使ってやんわりと押さえ込んでいるので晴香は襲い来る感覚――快感を逃がす事ができない。体に蓄積されていく快楽をどうしていいか分からず、イヤイヤと無意識に首を横に振る。  葛城の掌が頬に触れた。  親指の腹で薄らと流れる涙を拭われると晴香の昂ぶった感情も少し落ち着いてくる。 「日吉」  優しい声音と共に優しいキスが顔中に落ちてくる。両の瞼や鼻先に触れる温もりはやがて晴香の唇にも宿り、そしてそのまま触れるだけのキスが続く。  しばらくそうしていれば、晴香の呼吸と気持ちも落ち着きを取り戻した。それを見計らって葛城がゆっくりと体を起こす。  温もりが失われ晴香は寒さに身を震わせる。ずっと抱き合うようにしていたからか。それにしたって寒い、と晴香はここでようやく気が付いた。パジャマのボタンは全部外され前は全開で、それどころか下はすでに脱がされている。 「……手際が良すぎでは!?」 「それだけお前が俺のキスに夢中だったってことだろ?」  恥ずかしすぎる返しに晴香は真っ赤になって言葉を失う。そこにさらに葛城は追撃を掛ける。 「今日は上下揃ってんのな」  前回、上下バラバラの下着に悶えていた事を蒸し返してくるこの先輩がひどい。晴香は飛び出そうになる叫びと悪態を抑えるために、今宵も葛城家の枕を頭の下から引き摺り出して顔に上に乗せ抱き締めた。 「なんだよ照れんなって」 「……先輩に罵詈雑言を吐かないための配慮ですよ……!」 「薄い水色のレース……お前こういうのが趣味か」 「じっくり観察するのやめてくださいいいいい!」  堪らず枕から顔を離し叫ぶ。ついでに身を捩ってうつ伏せになろうと試みるが、腰元に葛城が馬乗りになっているので無駄な足掻きでしかない。半分浮いた上半身もあえなく元に戻される。 「ばぁかしっかり視……堪能させろよ」 「視姦って言いかけた……!」 「まあ視姦するよな」 「正直に認めればいいってものでは……」  そこまで口にして晴香は葛城をじっと見つめる。ん? と見つめ返す葛城の表情がいつもと違う。  いつもより、この間より、なんだかとても 「……嬉しそう?」 「そりゃ嬉しいに決まってんだろ」 「こ……うなってる、からです、か?」 「まあそうだな。お前をやっと抱けるんだから嬉しいさ」 「だから正直すぎるのもですよ?」 「それももちろんだけど、お前が俺に抱かれてもいいって、覚悟を決めてきたってのがなによりも嬉しいんだよ」  泊まる準備は当然ながら、前回の反省を踏まえて今回は下着も揃えて来た。そうやって、晴香も自ら望んでくれているというのが一番嬉しい。
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