二回目の金曜日・2

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 頬も肌も朱に染まり、未熟ながらにも官能に震えている。そんな晴香を見やり、葛城は緩く口角を上げた。すっかり出来上がった据え膳状態であるのを気付かぬは本人ばかりだ。  だからこそとんでもない剛速球がこの期に及んで飛んでくる。 「もう……挿れてください」  ぐ、と葛城が息を飲む。それにより晴香も熱に浮かされた状態から一気に正気に戻った。 今自分はなんと言ったか。とてつもなく誤解を招く発言をしてしまった。 「あああああまちがえました! ってちがう、ま、まちがえでもないけど! でもちがうんです!!」  慌てて訂正しようとすればさらなるドツボに嵌まる。  泥沼、のまさに生きた見本となったまま晴香はひたすら「まちがえ、じゃないけどまちがえました!」と繰り返した。  自分で自分が嫌になる。なにもこんな時にまで、いやむしろこんな時だからなのか。テンパりすぎての暴投が酷い、酷すぎる。もういっそ泣きたいくらいだ。  あわあわと狼狽える晴香に対し、葛城は一瞬動揺したもののすぐに落ち着きを取り戻した。今は笑いを堪えるのに必死である。 「せんぱい……!」 「分かってる落ち着け」  噛み殺しきれない笑いが漏れる。んん、と葛城はわざとらしく咳払いをし、ひとまず大きく息を吐いた。 「もう準備万端ですってわけでもなけりゃ、とりあえず早く終わらせたいとかそう言うのでもなくて、たんに気持ちよすぎてわけ分からん、ってなったんだろ?」  安定の理解度の高さに晴香は何度も大きく頷いた。今日は自分でも驚く程に快感を拾っている。それに翻弄されすぎてどうしていいのかが分からない。体はまだ葛城を受け入れられる状態ではない、というのはどうにか理解している。それでももう耐えられなかったのだ。与えられる快楽に。そして、葛城から向けられる視線の熱さに。 「……せんぱいのかおがむり」 「言いたい事はなんとなく分かるがそれにしたって言葉を選べ。さすがに傷つくぞ」 「だって先輩の色気が! 過去最高に!! 無理!」 「褒められてんだか貶されてんだか」 「動く十八禁ーっ!!」  葛城への想いを自覚した事で感度も上がったのだろう。そこへさらに、これまで抑えていたのを解放して葛城が欲をぶつけてくるものだからひとたまりも無かった。完全に男の色気に晴香は敗北し、早々に白旗を揚げるしかない。  しかたねえなあ、と口調こそ呆れているがどこか楽しそうに葛城は晴香の体を引き起こす。体の向きを反転させ、後ろから抱き込む様にして自分の膝の間に座らせた。 「え、先輩?」 「お前が俺の顔が無理って言うからなあ」 「せんぱ、ッ、んんっ!!」  葛城の両腕が前に伸びる。晴香の腕を上から押さえつけ動きを封じると、そのままやわやわと胸を揉みしだく。晴香は身を捩るが逃げられるわけもなく、与えられる快楽に次第に飲み込まれていく。
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