二回目の金曜日・3

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「先輩?」 「……もう少し、力入れて」 「でもそしたら痛いんじゃ?」 「大丈夫……気持ちいいから、もっと」  握って、と晴香の手の上に葛城の手が重なる。そのままゆっくりと上下に扱き、少しして葛城は手を離す。晴香は教えられた通り、そして求められるままに手を動かし続ける。  じわじわと握った物の大きさと硬さが増していく。それと同時に先端からヌルヌルした液体が流れ始めた。これは大丈夫なのだろうかと葛城の様子を伺うと、薄く開いた口から熱い息を漏らし、軽く眉間に皺を寄せている。 「先輩、これ……気持ちいいです、か?」 「ああ」  返ってくる言葉は短いが、葛城の顔はこれまでの余裕を感じさせるものではない。時折きつく瞼を閉じているのは、きっと自分と同じく快感を逃しているからだ。 「なんとなく先輩の気持ちが分かった気がします……」  気持ちいいかと尋ねられるのは恥ずかしい。こちらの羞恥を煽って楽しんでいるのだとばかり思っていたが、どうやらそれだけではないのだとこの瞬間理解した。  自分の愛撫で感じている姿を見たいと同時に、言葉でも欲しくなる。だからあんなにも訊いてしまうのだ。  こんな拙い動きでも葛城が気持ちよくなってくれている。それが無性に嬉しい。  晴香は掌が汚れるのも構わず、先端から溢れる液体を全体に広げる様に塗り込む。片手で触れていたはずがいつの間にか両手で包み込む様に握り、根元から上までを丁寧に撫でる。 晴香の指が窪みに触れると一際大きく葛城が身動いだ。やばい、と短く呟き晴香の手を掴む。 「え、痛かったです?」 「逆だ逆、気持ちよすぎて出そうになった」 「出そ……う、てわかったわかりましたさすがに分かったので説明は大丈夫です!」 「イキかけた」 「だからーっ!! 大丈夫って言ったのにー!!」 「ヤバいな、お前の手で扱かれてるってだけでイキそうになるとか」 「先輩だまって!?」 「危うく掌に出すとこだった」 「先輩!」 「でも出すならお前のナカがいい」  葛城の掌が晴香の腹に触れる。 「念入りに解したつもりだけど、それでもどうしたって痛みはあると思うから無理はさせたくねえんだけど……俺がもう無理」  葛城の視線が熱を帯びる。それと同時に晴香の掌の中にある欲の象徴がドクリと動き、晴香は知らず喉を鳴らした。 「晴香、お前が欲しい。なあ、俺にくれるか?」  先週の金曜の夜から今のこの瞬間まで、いつだって葛城は晴香を好きにする事ができた。そもそも男女の力の差だってあるのだから、葛城がその気になれば晴香に抵抗できるはずもない。  けれど葛城は無理矢理行為に及ぼうとはしなかった。晴香の意思を何よりも優先してくれていた。所々強引な場面はあったけれども、それでも。  こんなにも大切にしてくれて、こんなにも求められて、そして自分も求めている相手なのだから答えは一つしかない。 「――クーリングオフできませんけどいいですか!?」
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