先輩とわたしの一週間

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 その後、まさかの一緒にお風呂、と言ういきなりハイレベルの状況に放り込まれ、晴香の羞恥と混乱はさらに跳ね上がる。しかしこれまたまさかで何も起きなかった。  成人した男女で、恋人同士で、初めて体を繋げた翌日に一緒に風呂に入っているのに、何も。 「いつもは俺が先に起きてたから、お前の体は一応拭いてやってたんだけどな」  今日は葛城もゆっくり寝ていたからそれが出来なかった、と聞いた時にも晴香は一度羞恥で死んだ。確かにこれまで起きた時に特に体にべたついた感じなどはなかったが、それがまさかの。  一人でシャワーを浴びるのも無理そうではあったが、だからと言って葛城に体を拭いて貰うなどお願いできるわけがない。一緒に風呂などもってのほか、であったけれど、寝起きに逃げようとしたので軽くキレた葛城に強行されてしまったのだ。  このままここで二戦目が始まるのかとビクビクしていた晴香だったが、体を自分で洗う間に髪を洗われ、背中を向けた状態で共に湯船に浸かり、バスタオルで綺麗に体を拭かれた後の今現在、ソファに腰掛けた葛城の足下に座り込みドライヤーを当てられている。 「……これはなんというか」 「なんだよ」 「……完全に飼育員さんでは?」 「気持ち的には野生動物と保護官だよな」 「野生動物扱いひどくないですか!」 「昨日ちゃんと愛玩してやっただろ」 「い……言い方がおっさんみたいな……!」 「うるせえ。ほら終わったぞ」  晴香の頭をポスンと叩いて葛城は立ち上がる。 「お前腹減ってねえ?」 「空いてます」 「なんか買ってくるから適当にダラダラしててくれ」 「ダラダラ」 「ああ、動けそうならもうすぐ洗濯機止まるから中のシーツ干してもらえるか?」  いつの間に洗濯、っていうかシーツ、と晴香は何気なしに考えるがその原因に思い至るとボフンと顔から火が噴き出した。それを見て葛城がニヤニヤとしている。 「先輩! わたし大変すこぶるお腹が減っているのでさっさと行ってください!」  はいはい、と笑いながら出て行く葛城の背に、晴香は買い物したお釣りが全部小銭で返ってきますように! とくだらなく地味な念をひたすら送り続けた。  汚れなどどこにも見当たらないくらい綺麗に洗濯されたシーツを干し、とりあえずお湯でも沸かすかなとキッチンに立っていれば買い物を終えた葛城が帰ってきた。数種類のパンとカップに入ったサラダ、飲み物はキッチンにあった紅茶を淹れそれで遅めの昼食を摂る。二人で黙々と食べてしまうのはお互い空腹だったからだ。だいぶカロリー使うって言うしな、と聞き囓った知識が浮かび晴香は飲みかけの紅茶を吹く。葛城はチラリと視線だけを寄越すが特に何も言わなかった。多分考えは筒抜けであるだろうが。  お腹が満たされ一息入れると緩やかに眠気が訪れる。我ながら子供かなと思うがどうにも我慢が効かない。葛城が食器を片付けている間だけでも、とソファに頭を乗せて目を閉じた。
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