水曜日

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「ま、って、せんぱい……!」 「待たない」  鬼、と悪態を吐く余裕もない。確かに達したけれども、それは本当に軽いものでしかなかった。むしろ中途半端に快楽を刻まれて、先程以上にその先を求めてしまう。  ゆっくりと指を抜き差しされ体の中を撫で回される。まだそこから快感を得ることはできないが、指の動きに合わせて耳朶や首筋、ずっと触れて欲しくてたまらなかった胸の頂に唇を寄せられきつく吸い上げられると、まるでナカでも感じている様な錯覚に陥る。 「や……だ、いっしょにした、ら……ッ、も、あァッ!!」  溢れる蜜の量が多いのが自分でも分かる。気持ちよさを前の時よりも強く理解しているのがとても恥ずかしい。きゅうきゅうと何度も葛城の指を締め付けているので、自分がこれ程までに感じているのも伝わっている事だろう。それがまた晴香の羞恥を煽り、与えられる快楽に堕ちて行く。  指が二本に増やされる。他から与えられる刺激に上書きされて、痛みも圧迫感も感じない。水音がさらに増すのと同時に、ずっと触れられていなかった花芯をもう片方の指で弄られると晴香はあっという間に限界に追い込まれる。 「晴香、目」 「ッ……む、りぃ……!」 「ギリギリまで我慢しろって言ったろ。ほら、頑張れ」  晴香が目を閉じても指の動きは止まらない。が、強弱は付けられる。あとほんの一押しがどうしても足りない。晴香はポロポロと涙を零しながらどうにかしてこの責め苦から逃げようと頭を横に振るが、葛城は容赦などしてくれない。 「もっと気持ちよくなりたいだろ? だから、俺の目をちゃんと見ろ」  素直に快楽を求めるのはどうしても恥ずかしい。しかしこのままではずっと中途半端なままだ。もっと、ちゃんと、触って欲しい、気持ちよくしてほしい――涙で霞む視界の中で、それでもなんとか晴香は葛城を見つめる。体の内と外を弄る指の動きが同時に激しさを増し、晴香の啼く間隔も短くなっていく。ほどなくして一際高く、そして甘さをふんだんに含んだ声を上げるが、その寸前まで葛城から視線を外すことはなかった。  先程の比ではないくらいの倦怠感に、晴香は呼吸を繰り返すのもままならない。涙で濡れた目尻を「よくできた」と葛城の舌が優しく舐める。その刺激すらも今の晴香にとっては甘い毒だ。  葛城に「見られている」のを見ながらイッてしまった、という事実にもう意識を飛ばしたくて堪らない。どうして人は羞恥で死ねないのだろうかと本気で考えてしまう。声も最後辺りは我慢できずにいたので、どうか隣りに聞こえていませんようにと祈るしかない。無駄に厚い壁の威力を全力で発揮してくれていますように、と眉間に皺を寄せながらそう念じていると軽く顎を持ち上げられた。
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