だからボクは「おこ」になる

1/1
前へ
/4ページ
次へ

だからボクは「おこ」になる

 それから、数ヶ月後。ゆかりんは、また浮気をした。  ボクの知らない男の匂いを付けて帰ってくるようになり……ある日遂に、その匂いのが、ボク達のうちにやって来た。  初対面の時。ゆかりんが抱き上げたボクにいきなり顔を寄せ、ヒゲのザラザラする肌で頬ずりなんかするもんだから、驚いて肉球でパンチした。咄嗟だったけど、爪は引っ込めたよ。それくらいのマナーはあるんだから。  彼がかけていた黒縁の眼鏡が斜めにズレて、ゆかりんと彼は2人して大笑いした。  ちえっ。こんな筈じゃなかったのになぁ。 「むー(ンー)離せよおぉ(ンナァゴオォ)」  大好物の美味しいオヤツにつられて近づいたら、身体を両手でガッチリ掴まれた。彼はニタリと笑って、ボクに頬ずり。またヒゲがチクチクする。くそう、騙し討ちなんて、卑怯だぞっ! 精一杯の力を込めて、両手の肉球で、彼の肌を押す。 「もぅ、やめなよぉ、たっちゃん」  ボクは必死なのに、彼の隣でゆかりんが笑って見ている。助けてよぅ、ゆかりん! 「かわえーなぁー、ユウちゃんは」  腕の中に閉じ込められて、武骨な指で喉を擽られる。嬉しくなんかないやい。不機嫌なんだという気持ちを込めて、喉をゴロゴロ鳴らす。 「ナアァアアァ……」  彼のせいで、今日もボクはちょっぴりなんだ。なのに……もうっ、ニンゲンって、どうしてこんなに鈍感なのっ! 【了】
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

21人が本棚に入れています
本棚に追加