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愛でる(愛でられる)
「ユウちゃん」
ベッドの中の膨らみに、シーツの上からそっと触れる。柔らかな温もりが、呼吸に合わせて小さく上下している。
「もぅ……仕方ないんだから」
ゆっくりシーツの端を捲ると、穏やかな寝顔が現れて。覗き込んだら、堪らなくなった。そっと、フワフワの猫っ毛の頭を撫でる。擽ったそうに 鼻の頭にシワを寄せ、モゾモゾと身体を動かした。
「可愛いなぁ」
今日は、彼の誕生日。確か、今年で二十歳になるらしい。なのに、出会った1年前とほとんど変わらなくて、まだコドモみたいにあどけない。
「ユウちゃん、起きて。お腹空いたでしょ? ご飯にしよう、ね?」
両手を伸ばして、抱き上げる。ん……また少し、重くなったかも。
彼は瞼を少しだけ上げて、蕩けた眼差しをあたしに向けたが、大人しくされるがままになっている。多分、機嫌は直っている……てゆうか、もうさっきのことは、忘れたんじゃないのかな。とはいえ、お風呂に入って、身体に付いていたらしい匂いは、洗い流しておいた。こんなに敏感だなんて、失敗だった。
「ごめんね。浮気じゃないんだよ。これを受け取りに寄っただけなんだから」
ソファーに座って、あたしは膝の上の頭を撫でる。ウーンって手足を広げ、背筋を伸ばして、気持ち良さげに大きく欠伸をすると、彼は金色のまあるい瞳であたしを見上げた。
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