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浮気、発覚!
今日のボクは、激おこです。
「ちょっと、ユウちゃん……機嫌直してよぉ」
甘ったるい猫なで声を出しても、知るもんか。年下だからって、ナメないでよ。
ソファーの端で、プイと背を向けた切り、ボクは口を結ぶ。
「もうっ。誤解だって言ってるでしょ? あたし、浮気なんかしてないわよ!」
ゆかりんは、唇を尖らせて反論すると、見慣れない手提げの紙袋をダイニングテーブルの上に置いた。
コトの起こりは、少し前。
「ごめんねぇ、遅くなっちゃって。すぐにご飯にしようね」
待ってたんだ。彼女の帰りが、いつもより遅いから。なにかあったんじゃないかって、心配していたんだ。だから、鍵を回す音がした途端、転がるように急いで駆けて、玄関で出迎えた。なのに――大好きな彼女は、ボクの知らない匂いを付けていた。プンと深みのある、大人のオトコの移り香だ。
「ユウちゃん?」
彼女はシレッと笑顔を見せた。ウソでしょ、まさか開き直り? それとも、ボクが気付かないとでも思ったの?
「どういうこと?! 浮気するなんて、酷いよおっ!」
吐き捨てると、ボクはリビングに駆け戻り、ソファーの端で膝を抱えた。胸の奥から黒い気持ちが溢れてきて、止まらない。
「やだ、誤解だよぉ。浮気なんかする訳ないじゃん」
彼女は、ボクが座るソファーの反対側にそっと腰を下ろした。
「ユウちゃん、ねぇ……」
「やだっ。触んないでっ!」
指先が伸びてきたから、思わず身を引いた。ボクの大好きな、白くて柔らかな掌だけど、浮気相手の匂いが染みた肌なんかに、触れられたくない。てゆうか、それくらい気付いてよっ!
「信じらんない。無神経にも、程がある!」
するりとかわして、にらみ返した。ソファーを離れ、そのまま寝室に駆け込んだ。追いかけてくる気配もなく、しばらくするとリビングの方から水音が聞こえてきた。
……ゆかりんのバカ。
冷たいベッドに潜り込んで、シーツに包まる。枕に顔を埋めると、甘くて優しい香りがする。他の男の匂いに汚される前の、混じりけのない彼女の香り。何度も吸い込むと、ボクは目を閉じた。
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