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うりこ姫、マッチングアプリ始めるってよ
はじめまして!
プロフィールをご覧いただきありがとうございます。
地球在住で、おじいさんとおばあさんと私の三人暮らしです。
普段なかなか出会いがなく、友達の紹介でマッチングアプリに登録しました。
将来を見据えて真剣にお付き合いできる方と出会えたら嬉しいです。
将来は、おじいさんとおばあさんのお家へ定期的に顔を出したいので、その点ご理解のある方だけよろしくお願いします。
「というプロフィールなんですけど、一向に誰からもアプローチが来ないんです。どう思います、天邪鬼?」
「そうだなぁ、やっぱりおじいさんとおばあさんの家に定期的に帰りたいとなると、普段は家にいてくれないのかなって思われちまうから、抵抗のある雄が多いんじゃないか」
「やっぱりそうでしょうか」
「素直に、おじいさんとおばあさんの持ってきたお見合い話を受けるのがいいと思うぜ」
「うーん。ですが、私だって自由恋愛に憧れくらいありますの。はあ、昔みたいに、私のお家まで来て求婚してくださる殿方、もういらっしゃらないのでしょうか」
「草食系男子が増えたらしいしな」
うりこ姫は、空に浮かぶ月を見ながら、溜息を一つこぼした。
コンコン。
突然、玄関の扉が叩かれた。
「はーい」
「失礼します。私、月の国の姫、かぐや姫様に仕える側近と申します」
「ご丁寧にありがとうございます。私は、おじいさんとおばあさんの一人娘であるうりこと申します。それで、月の国のお姫様の側近さんが、どういったご用件でしょうか」
「いえ、こちらでかぐや姫様の行動をまるまる真似する不届き者がいると小耳にはさんだもので」
「まあ、そんな方が……」
「ふむ。どうやら、あなたは何も知らされていないようですね」
側近は、周囲を見渡し、こそこそと家から出ようとする天邪鬼を目にとめる。
そして、にっこりと微笑み、つかつかと早足で近づいていく。
「どうやら、あなたが首謀者のようですね?」
「え、違いますよ。月の国のお姫様に、そんな無礼なことをするわけないじゃないですかーやだなー」
「こちら、嘘発見器です」
「…………」
嘘発見器は、元気に音を鳴らし、天邪鬼の言葉の嘘を即座に暴いた。
側近は、満面の笑みを浮かべる。
「ちょっとお話、よろしいですか?」
「え? あ……いや……ちょ……。た、助けてうりこ姫えええええええ!?」
うりこ姫に向けられた天邪鬼のすがるような瞳は。
「何かよくわかりませんけど、悪いことをしたんならごめんなさいしてくるのがいいと思いますよ? 天邪鬼」
「うりこ姫えええええ!?」
何もわかっていない純粋無垢なうりこ姫の瞳に吸い込まれた。
「では、少々お借りします」
「はーい。天邪鬼、夕ご飯までには帰って来るんですよー? 遅くなる時は、連絡くださいねー」
「ぎゃ―――逝きたくない―――!! 死にたくない―――!!」
「さすがに殺しませんよ」
月の灯る穏やかな夜。
天邪鬼は、側近に引きずられて月の国へと連行された。
「あ、お夕食の準備をしなくては」
うりこ姫は、プロフィールをどう修正するか考えながら、夕食の準備を始めた。
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