かぐや姫、相席するってよ

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かぐや姫、相席するってよ

「彼氏に振られました」   「まあ、側近ったら。いったい何をやって振られたのよ。プークスクス」   「ここ最近、誰かさんのせいで仕事が増えまして。まったくデートができず、俺より仕事が大切なんだなって、別れを切り出されました」    かぐや姫は、側近からさっと目を背けた。  心当たりがありすぎた。  かぐや姫は、婚活の時間を確保するため、さりげなく自分の仕事を側近にふっていたのだ。  側近は、それを理解したうえで、気づかないふりをして仕事を受け取っていた。  結果、このざまである。   「そ、それは、災難だったわね」   「ええ、本当に」   「そ、そうだわ側近。地球に、殿方と相席をして出会いを探す居酒屋があるらしいの。二人一組で行く場所らしくて、今夜行ってみない?」   「相席する居酒屋ですか……」    側近は、かぐや姫から渡されたチラシを見る。    外観と内装は、お洒落な居酒屋といった雰囲気だ。  一般的な居酒屋と異なるのは、女性は食べ飲み放題が無料であることと、見知らぬ二人組の男性が相席をしてくること。  そして、相席した相手を気に入れば、連絡先を交換し、デートを重ね、恋仲になっていくシステムだ。   「まあ、独り身ですし、無料ですし、お付き合いしますよ。独り身ですし」   「は、はい決まり。じゃあ、ちゃっちゃと今日の分の仕事片づけるわよー」    かくしてかぐや姫と側近は、夜の町へと消えていった。       「はい、お二人様ですね。席へご案内いたします。当店のご利用は初めてですか?」   「はい、初めてです」    かぐや姫と側近は、店員に席に通された後、居酒屋のシステムの説明を受ける。   「ただいま、男性のお客様が少なくなっておりますので、少々相席までお時間をいただくかもしれません。フードとドリンクは無料となっておりますので、タブレットからご注文ください」    店員は、そう言うと立ち去って言った。    かぐや姫と側近は、きょろきょろと店内を見舞わず。   「お洒落な場所ねー」   「そうですね。独り身には眩しすぎます」   「さ、殿方が来るまで、なにか食べましょうか。晩御飯を食べてないから、私お腹ペコペコなの」   「そうですね」    かぐや姫と側近は、メニューを眺める。  枝豆やたこわさといったおつまみから、唐揚げやフライドポテトといった揚げ物まで、定番の料理が揃えられていた。   「私、生ビールと枝豆!」   「思考が国王様そっくりですね」   「誰がおじさんそっくりよ!?」   「そんなこと言ってませんよ。私は白ワインにします。後は、シーザーサラダとナポリタン」    注文した品はすぐに届き、二人は乾杯を交わす。   「あー、ビールと枝豆の組み合わせは最高ね! 犯罪的! 焼鳥があれば、さらに最高!」   「発想がおじさんそっくりですね」   「誰がお父様そっくりよ!?」   「そんなこと言ってませんよ」    食が進む。  酒が進む。  グラスは二杯、空になった。       「……相席、されないわね」   「周りを見る限り、私たち以外にも待っている女性客がいますね。まだ多くの殿方はお仕事中なのかもしれません」   「来る時間が早過ぎたのかもねー」    食が進む。  酒が進む。  グラスは二杯、空になった。       「しかひ、このメニューはどうかと思いまふね」   「どういうこひょ?」   「枝豆だの、唐揚げだの、本当に普通の居酒屋ではないれすか。もっとこう、カルパッチョとかチーズフォンズとか、SNS映えするメニューにょ方が女性客を呼びこめると思うのです」   「一理あるわにぇ。でも、食べ放題というシステムを考えると、お腹を満たしやすい揚げ物を多くして、たくしゃん食べられないようにするのは経営として正しひと思うわ。それに、店内に殿方が少ない現状を見る限り、殿方受けするメニューで、殿方を呼びこもうとしてりゅのかもしれないわ」   「なるほど。そうかみょしれましぇんね」    食が進む。  酒が進む。  グラスは二杯、空になった。             「お客様、大変お待たせいたしました!」    店員が、二人の男性客を連れ、かぐや姫と側近の元にやって来る。   「ふぇー?」   「んー?」    頃には既に、かぐや姫と側近は、完全にお酒に呑まれていた。  待ち時間の長さに加え、急いで仕事を終わらせた疲労。  側近はそれに加え、失恋の悲しみ。  すべてがかぐや姫と側近を、泥酔へと至らしめた。   「あの、お客様……」   「ビールもういっぱいー」   「私はウォッカをー」   「はやくー」   「お願いしまーす」   「………………………………」    かぐや姫と側近は、めでたく出禁となった。
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