かぐや姫、マッチングアプリ開発するってよ

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かぐや姫、マッチングアプリ開発するってよ

「えーっと、内部処理は全部実装完了っと。後は、画面と結合すれば」   「姫様、何をなさっているのですか?」    ここ数週間、毎日パソコンにかじりつくかぐや姫に、側近は問いかける。   「見てわからない?」   「わからないから聞いているのですが」   「マッチングアプリを開発してるのよ」   「はい?」    かぐや姫は作業の手を止め、自信満々に立ち上がる。  そして、側近にスマートフォンをずいと突きつける。  そこには、見たことのないマッチングアプリが表示されていた。   「名付けて、『マッチングアプリ KAGUYA』よ!」   「はあ……」    かぐや姫は、にこにことしながら開発したばかりのアプリの機能について説明をしていく。    例えば、血縁関係の有無の確認。  かぐや姫は、うっかり義理の子孫とマッチングしていた過去を悲しんだ。  その悲しみを二度と誰にも起こさせないと誓い、開発した機能である。  他にも、店と移動方法の自動生成。  月から地球の遠距離となると、デートを取り付けてからの移動も大変である。  そこで、デートの約束をすると同時に、アプリ側でデートの場所を自動で決定し、店の予約とその店までの移動手段の予約を自動で行ってくれる機能である。  かぐや姫にとって、痒いところに手が届く機能がふんだんに盛り込まれていた。    また、アプリデザインも才覚溢れるかぐや姫直々のデザインで、万人に受けることが確約されるほどお洒落で可愛いものであった。   「これで今度こそ、いい殿方とマッチしてみせるわ!」   「はあ、頑張ってください」    側近は、放置された業務を見ながら、今夜の残業を覚悟した。        そして、ついに『マッチングアプリ KAGUYA』は地球で大々的にリリースされた。  その斬新な機能の数々は、多くのユーザーを魅了し、あっという間にマッチングアプリ人気ランキングで堂々の一位をたたき出した。    かぐや姫自身もそのアプリを使い、理想の男性との出会いに思いをはせた。       「なんでマッチしないのよおおおおお!!」    思いをはせただけで終わっていた。   「なんでよおおおおお!! マッチング率、驚異の90%越えって雑誌で特集されてるのに!! 私!! 1回も!! マッチしてないんだけど!!」   「姫様、落ち着いてください」    地団太を踏むかぐや姫を、側近は雑に慰める。  そして、側近のスマートフォンをかぐや姫に見せる。   「原因は、おそらくこれです」   「……どれよ」   「デートするお店の予約とそのお店までの移動手段を自動予約してくれる機能です」   「なによ! どこが悪いって言うの!」   「ここです」    側近が指差した場所には、金額が表示されていた。  この機能は、予約だけでなく、飲食費と移動費を自動で算出し、割り勘し、互いが事前にいくらかかるかを知ることもできる画期的なものだった。    そう、移動費も割り勘。  月から地球までの移動費も割り勘。    表示されている金額は、数百億円はくだらなかった。   「誰がデートするんですかこんな高い女と。加藤○里でさえ最低月1千万円しか要求してないんですよ?」   「…………」   「…………」   「ふ……ふふふ……」        かぐや姫は、笑った。   「糞アプリ!! こんなアプリ、もう開発中止よ!!」    その日、『マッチングアプリ KAGUYA』はサービスを終了した。  ユーザーは嘆き悲しみ、抗議を送るも、サービスの終了が撤回されることはなかった。    そして『マッチングアプリ KAGUYA』は伝説となった。       「姫様、アプリ開発の赤字分は、姫様のお小遣いから差し引くようにと国王様から申しつけが」   「わーん、踏んだり蹴ったり―」
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