かぐや姫、街コン行くってよ

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かぐや姫、街コン行くってよ

「……姫様、何をなさっているのですか?」    ベッドにゴロンと転がり、スマートフォンを操作するかぐや姫に、側近は問いかけた。   「見てわからない? 街コン探してるの?」   「街コン……ですか……?」   「あら側近、街コンを知らないの? そんなんじゃ時代に取り残されるわよ。本当に賢いナウなヤングは、街コンで異性と出会うのよ」   「はあ……」    側近の生暖かい視線を気にも留めず、かぐや姫は近々開かれる街コンの情報を見ていた。  今週末は、かぐや姫にとって久々のオフなのだ。  参加できる限りしてやろうと意気込みながら興味のある街コンを探す。   「あ、見て見て側近! これとか面白そうじゃない?」   「えーっと、オタク限定街コンですか?」   「そう! 私、アニメも見るから気が合う人がいると思うの」   「姫様って、なんのアニメを見てましたっけ?」   「えっと、『MOONPIECE』とか『転生したら月の兎だった件』とか」   「それって、地球で放送されてましたっけ?」   「……他のを探すわ」    かぐや姫はがっくりとうなだれ、再び探し始める。  側近も、スマートフォンをひょいとのぞき込む。   「あ、これとかどうですか?」   「ん? どれどれ?」   「ぽっちゃり女子限定イベ」    ドンッ。    かぐや姫の拳が、床に叩きつけられる。   「おっと読み間違えました。最近、視力の低下が酷くて」    かぐや姫は、自分のお腹と二の腕に視線を落とす。  ぷにぷにとやわらかそうだった。   「……側近、パーソナルトレーニング予約しといて」   「かしこまりました」    街コンの前に痩せようと決意しつつ、かぐや姫は探し続ける。   「んー、色々見たけど、やっぱ公務員男子と会えるイベントが一番良さそうね」   「そうですね。収入も安定してそうですし」   「収入はどうでもいいのよ。私、死ぬまで遊んで暮らせるだけのお金持ってるし」    ドンッ。    側近の拳が、床に叩きつけられる。   「びっくりしたー。どうしたの側近?」   「いえ、蚊が」   「あらそう。それで、何の話だったっけ。そうそう、公務員の話ね。収入はどうでもいいんだけど、公務員の人って真面目で誠実な人多そうじゃない? なんとなくだけど」   「そうですか?」   「そうよ。よし、これにしよ」    かぐや姫は、公務員男子と会えるイベントの参加を決め、日程と残席を確認する。  幸い、今週末にもイベントは開かれ、残席も余っている。  そのうえ女性の参加費は2000円と、お手頃だった。    すいすいと操作し、参加ボタンを押したところで、『参加条件を満たしていません』というメッセージが表示され、参加に失敗する。   「あら、参加できないわ。どうしてかしら」    かぐや姫は、メッセージの下にある、参加できない理由を確認する。       『本イベントは、20代女子限定のイベントとなります』       「…………」   「…………」   「……姫様、今、おいくつでしたっけ?」   「…………」    かぐや姫の生年月日。  それは、竹取の翁によって発見された、はるか昔。   「…………」   「ふ……ふふふ……」   「…………」   「ふふふふふふふふふふふふ」    かぐや姫は、スマートフォンをぶん投げた。   「糞イベント!! 女の子を年齢で差別するなんて糞イベントよ!! 女の子は皆お姫様なのよ!!」
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