かぐや姫、世界平和について考えるってよ

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かぐや姫、世界平和について考えるってよ

「世界平和って、どうすれば達成できるのかしらね」   「姫様、突然の路線変更やめてください」   「へ?」    かぐや姫が深刻そうな表情で発した言葉を、側近が即座に遮る。   「いいですか、姫様。この『かぐや姫、××するってよ』シリーズは、姫様が恋人を作ろうとして、ぼんくらなことをして失敗するのがウケているのです。にもかかわらず、突然世界平和という真面目な話題を入れられると、『おいおい、この話はどこへ向かってるんだ』と思われ、打ち切りの危機を迎えます」   「何を訳の分からないことを言ってるのよ」    かぐや姫は立ち上が、り本棚から一冊の写真集を取り出して、側近へと広げてみせる。  写真集には、先進国の写真と発展途上国の写真が並べられていた。  町の違い。  食事の違い。  遊びの違い。  様々な文化と現状が比較され、その格差をありありと示していた。   「見なさい! 地球は! 世界は! こんなにも格差に溢れているのよ! 私たちも同じ宇宙の人間として、なんとかしてあげたいじゃない!」   「いえ、世界平和や格差の解消は大切なんですが……かぐやシリーズの内容の統一性が……」   「なによ! 世界平和より大切なことなんてあるの!?」   「ア、イエ、ナイデス。ゴメンナサイ」   「わかればいいのよ!」    かぐや姫は写真集を本棚へ戻し、代わりに自分の仕事机から紙を取り出し、机に置いた。   「そこで、こんなものを作ってみたの!」   「えっと、なんですかこれ?」    そこには、組織の設立案が事細かに書かれていた。   「どこの国にも捕らわれずに格差解消を目指す非政府組織、その名も『KAGUYA&PIECE』よ!」   「ついに組織まで作っちゃったよ、この人」   「ふふふ。人材の募集に、他の組織との連携。これから忙しくなるわよ!」    やる気に満ち溢れたかぐや姫は、そのまま鼻歌交じりに部屋の外へと出ていった。    取り残された側近は、机の上に置かれた紙を手に取る。   「まあ、世界平和のために何かをするのはいいことですし、しばらくは見守って……ん?」    そして、紙の下に、もう一枚の紙があることに気づく。  側近は、二枚目の紙を手に取り、しげしげと眺める。   「……マッチングアプリユーザー増加計画?」   『より優れた殿方を見つけるには、マッチングアプリのユーザーを増やす必要がある。現時点では一定水準の技術レベルを持っている国のみでマッチングアプリが使用されているため、この技術格差を是正し、すべての国がマッチングアプリを使用可能になるまで技術レベルを引き上げる。これにより、マッチングアプリのユーザーが爆発的に増加し、私選び放題選り取り見取り。また、格差の解消を主軸としてお父様に説明することで、その金銭的協力が受けられる可能性も増大する見込み。さすが私、天才』   「…………」    側近は、二枚目の紙をそっとポケットにしまい、かぐや姫の部屋を出る。   「よかった、いつものぼんくらだった!」    そのままスキップ交じりに、かぐや姫の父――国王の元へと向かった。             「ねえ側近、例の『KAGUYA&PIECE』……お父様の大反対で、私組織運営からはずされたんだけど……」   「壮大な計画過ぎて、姫様の手に余るとご判断なされたのでしょう。国王様なりの愛ですよ」   「う~~~……私の計画が……」   「何かおっしゃいました?」   「なんでもありません!」    その後、月の国は地球の各国首脳と会談をし、格差解消のための正式な支援活動を開始した。  こうしてまた一つ、世界平和は歩を進めた。
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