貴女の未来と私の未来

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貴女の未来と私の未来

 これはマズイ。  そう思った。 「浅倉さん。この書類、お願いします」 「あ、はい。確認します」  書類の入ったクリアファイルを受け取る時に少し、手が触れた。どきりとしたままに「ごめんなさいっ」と慌てて告げたが、まるで気にもしていない相手は、なんの事だかわからないようで小首を傾げた。  マズイよ、これは。  触れた指先がじんじんする。熱が籠る。会釈して去った彼女の後ろ姿を、名残惜しく見守ってしまった。ふわりと揺れる長い髪。甘い香りがして来そうだ。きっと私の最安値シャンプーなんかと違う。きっと私じゃ選ばないような価格のシャンプーやトリートメントなんかを使っているんだろう。庶民臭さを感じさせない先輩。既婚者。女性。 ーーーーそう、同性。  否、この場合、ヤバイ方は「既婚」の方か。  ヤバイよ。これ、絶対恋だよ。  早く消滅させなくては。
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