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仕事が終わり、私は電車に揺られていた。普段なら退社するのは夕方七時を過ぎるのだが、今日は幸運にも定時で帰ることができた。
新人賞の結果は六時ぴったり、ネット上で発表される。スマートフォンを見ると、五時五十分と表示されていた。もう間も無く結果が分かる。
今日一日、仕事なんて全く手に付かなかった。上司に怒られても上の空だった。今日で人生が変わるかもしれない。そう考えるだけで、体がフワフワと宙に浮いているような感覚になる。
ふと私は、電車の宙吊り広告に目がいく。そこにはクリスマスのイベントについて書かれていた。
会社の同僚達は、クリスマスに向けて彼氏を作ったり、プレゼントやデートはどうしようかなど話し合っていた。私はクリスマスなんかに目もくれず、ただひたすらに小説を書いていた。後悔はない。全ては大賞を受賞するためだ。それ以外は何もいらない。
スマートフォンを見ると、六時になっていた。いよいよだ。心臓が飛び出そうなほど、激しく動いている。私は震える手でスマートフォンを操作し、新人賞の結果発表を確認した。
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