ジレンマ

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ジレンマ

――仕事で海外に行ったきり。あれから彼から電話もメールも一つもなかった。恋人のことなんか忘れて、相変わらず自由気ままな奴だと思いながらも俺の心は司が居ない寂しさで膨らんだ。もう馴れた事なのに、どうしても司の事が気になる。  今何知ってるのかとか、元気にしてるのかとか、俺の事忘れてないだろうなとか、ちょっとした瞬間に頭の中が司でいっぱいになる。きっと俺の不安なんか、気にもせずに今頃どこかの国で大好きなカメラを片手に飛び回ってシャッター切ってるんだなと思った。  本当だったら俺もアイツと一緒について行きたい。でも、それは出来ない。俺と彼はお互いに別の世界を歩んでそれを糧にして生きてる。それを否定する事は出来ない。写真撮影の途中でボンヤリと考えてたら、カメラマンの人に急に怒られた。俺が珍しくミスするとマネージャーの人に心配される始末だった。写真撮影が終わった頃にはどっと疲れが溜まった。その疲労感の中でまた次のスタジオへと車で移動した――。
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