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ハンドメイド
――クリスマスが近づいてくると、自然に気持ちが浮かれていた。
あともう直ぐで司に会える……!
久しぶりに彼に会える喜びに胸がはずむと、雑誌の撮影中だと言う事も忘れて彼を想った。衣室で馴染みのヘアースタイリストの人とクリスマスについて会話をした。彼は見た目や、喋り方や仕草がオネェ系の人だった。そして、俺と司が付き合っている事を知っている一人だった。俺はその人のことをカヲルさんと呼んでいた。カヲルさんは鏡の前で、俺の髪をセットしながら話しかけた。
「いいわね~リョウちゃん! 司ちゃんと一緒にクリスマスいられて! オカマの私なんてね、家で独り寂しくクリスマスを過ごすんだから! アンタたち若いからいいけど、この年になると添い遂げてくれる人は誰もいないんだから!?」
カヲルさんはそう言って話すと、悔しそうに自分が持っているハンカチを噛んだ。
「そ、そんな事ないですよ。カヲルさんだって、まだまだいけますよ!」
「あら、リョウちゃんいいこと言うのね♪ オカマの私を慰めてくれるのね。やっぱりリョウちゃんは見た目も中身も良い男ね。あたしがもっと若ければリョウちゃんを恋人にしてあげたのに残念だわ☆」
カヲルさんはそう言うとウフっと笑って髪のセットを終えた。俺は半ば半笑いしながら聞かなかった事にした。
「じゃあ、クリスマスのプレゼントはもう買ったのかしら?」
カヲルさんが聞いてくると俺はあやふやに答えた。
「――言え、それがまだ決まってません……。去年は司に腕時計を買いましたが、今年はどうしようか考えてます」
そう言って答えるとカヲルさんが何気なく話した。
「あら、そうなの? じゃあ、今年はハンドメイドのセーターをあげたらどうかしら? きっと司ちゃん、喜ぶわよ!」
カヲルさんの話しに俺は少し照れた。
「で、でも…俺、セーターなんて一度も編んだ事ないし…――」
顔を赤くしながら自信無さそうに話すと、後ろからカヲルさんが両手で肩をポンと叩いてきた。
「大丈夫よリョウちゃん! 私が編み方教えてあげるから任せなさい!」
「カヲルさん、いいんですか……?」
後ろを振り向いて尋ねるとカヲルさんは任せなさいと言って目の前で頼もしく返事をした。こうして今年のクリスマスは、ひょんな事からハンドメイドの手作りセーターに決まった。
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