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諸刃
――仕事が終わると、足早に家に帰宅しようとした。ロビーの前を通るとテレビの前には、人だかりが出来ていた。周りはニュースに釘付けだった。俺はそこにいたカヲルさんに声をかけた。
「皆で何を観てるんですか、カヲルさん?」
「あっ、リョウちゃん…! ダメよ観ないほうが――」
「何をですか?」
不意にテレビの方に目を向けた。テレビには、司とY子とのスキャンダルなニュースが流れていた。俺は一瞬、嫌気がさして、テレビを観ずにその場から離れようとした。でも、何故か胸騒ぎがしてくると其処に立ち止まった。
テレビには司とY子が一緒にいる写真が取り沙汰されていた。一枚目、二枚目、三枚目と、俺にとっては見たくもない写真が写し出されていた。そして司会者の人が写真について話を始めた。
「この写真は昨日のお昼に撮られたものです。蘇我氏が着ているセーターはY子さんがどうやらプレゼントしたらしいです。因みにこの写真は、2人の時に撮られた写真のようですが、他にも2人でいる時の写真等が多く撮られています」
司会者の人がそう言って話すと、コメンテーターの若い女性が話した。
「つまりY子さんと蘇我氏は、付き合っているんですか? Y子さんは今、人気絶頂のグラビアアイドルですもんね。それに蘇我氏も今注目されている精鋭の若手の写真家となると2人が親密に交際しているならば大きなスキャンダルですね。それにY子さんが蘇我氏にセーターを贈ったとなれば、その可能性は否定できませんよね」
テレビでは2人について好き勝手に報道していた。周囲はワイドショーを見ながら、好き勝手に2人の仲を騒いだ。俺は2人のスキャンダルな話しに頭の中が真っ白になった。2人の関係が大きく取り上げられると、俺の中で司を信じていた心が粉々に砕け散った。
「嘘だろ司、嘘だよな…――?」
信じていた心が砕けると途端に涙が溢れ出た。俺にとって、何が真実で何がウソか、わからなくなった。
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