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それは心の拒絶だった。それから二日間、外にも出ずに、ずっと家の中に閉じ籠った。何するにも気力がわかずに体も、何だかダルかった。
――誰にも会いたくない。ソファーの上で両膝を抱えながら、自分の世界に塞ぎこんだ。家の中でボーッとしているとカヲルさんが家に訪問しにきた。俺が仕事を2日間休んだから心配になって、見に来てくれたらしい。カヲルさんは俺と司との事を心配そうに聞いてきたが、俺は答える気力がわかなかった。カヲルさんは何気なく傍で話してきた。
「ねぇ、そういえばリョウちゃん。あのセーターは、完成したの? 明日はクリスマスでしょ? もちろん司ちゃんと一緒に祝うのよね?」
彼に聞かれると、俺は悲しい表情で一言答えた。
「あれはもういいんです。セーター窓から捨てちゃいましたから…――。司とのクリスマスも、もういいんです…! そ、それに…! クリスマスは一人でも、祝えますから……!」
「リョウちゃん……」
つい、感情的になると子供みたいに拗ねた。カヲルさんは心配そうに俺の顔を見つめてきた。窓のほうをジッと眺めると小さく呟いた。
「俺もあのセーターみたいに、司に捨てられちゃうのかな…――」
「リュウちゃん、こんなこといったらなんだけどね、司ちゃんとあの女の噂なんて信じちゃダメよ……! どうせマスコミのことなんだから、根も葉も無い噂を立てて面白がってるだけよ! あいつらなんてネタがあれば何だっていいんだから…――!」
「カヲルさん……」
「あたしは司ちゃんのリョウちゃんへの愛を信じるわ! それにあんな女と彼がくっつくなんてあたしは絶対に認めないんだから……! 負けてはだめよ、リョウちゃん! しっかりして!」
カヲルさんはそう言うと、弱気な俺を強く励ましてくれた。その言葉に一瞬、気持ちが楽になった。
「その…カヲルさんありがとうございます!」
「いいのよリュウちゃん、あたしはいつだって貴方達の味方よ! それに貴方がそんな暗い顔で一人で悲しんでいたら、きっと司ちゃんも悲しむわよ。ホラ、笑ってリュウちゃん! そうだわ、お昼ご飯あたしが作ってあげる!」
カヲルさんの優しさに触れると、何だか涙が溢れてきた。そんな俺をカヲルさんは黙って頭を撫でてくれると「大丈夫、きっと大丈夫よ」と言って励ましてくれた。
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