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「ああ、確かに彼女にセーターは貰った。でも、あのセーターは俺だけじゃなく、他のスタッフにも彼女はセーターを配っていた。あれは彼女なりの感謝を込めた皆へのお返しらしい。最初は凄くわがままだったけど、俺が叱りつけた後は彼女も自分の態度に反省したらしく、最後の撮影辺りは彼女は素直になっていた。まるで出会った時のお前と同じみたいにな…――」
司はそう言うとクスッと笑ってきた。俺はその話を聞くと胸の中にあるつかえが、雪どけのように溶けていくのを感じた。
「そうだったのか……」
安心すると胸を撫で下ろした。すると司が俺の顔に触れると指先で涙を拭った。
「安心した?」
司は目の前でクスッと優しく微笑んだ。
「俺はね。仕事中、お前の事をずっと考えていたんだ……」
「えっ…?」
「――俺が海外に行っている間、おまえずっと不機嫌だったろ? ましてや、テレビや雑誌で俺とあの子の噂を知ってたら、お前の事だからストレスが溜まってるんじゃないかって、それを含めてお前の事がずっと気がかりだった。クリスマスの日には帰れないかも知れないって言った時、お前が俺に勝手にしろよって怒っただろ? そのあと電話も切れて、なかなか繋がらなくなって。俺は背筋が凍りついたよ」
「司…――」
「お前を失うかも知れないって思ったら、頭の中が真っ白になった。だから俺は、クリスマスには何とか終わらす為に火事場のくそ力じゃないけどさ。何とか昨日、無事に撮影が終わって直ぐに、慌てて飛んで帰ってきたんだ」
そう言って話すと俺の頭をクシャクシャと撫でた。彼の話を聞いて、自分が子供っぽく拗ねて、司の事をを困らせた事に素直に反省した。
「でもな。俺、少し嬉しかったんだ。だってそれってお前が俺にヤキモチ妬いてるって事だろ。それって、俺のこと好きって証拠だよな。だろ?」
司は怒る事もなく優しく笑って微笑んだ。俺は彼の深い愛情を思い知らされると小さな声で謝った。
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