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「司ゴメン、お前を困らせて……。俺もっと良い子になるから司のそばにいさせてくれ…――」
震えた声で彼に謝ると、止め処なく涙を流した。
「あたり前だろ! お前は俺だけのものなんだから、俺が呆れるくらいずっと傍にいろよ!?」
司の純粋で真っ直ぐな言葉に、一希は嬉しくなって泣きながら頷いた。
「ああ…! ところでこのセーター、俺が作ったヤツだよな。どこで見つけたんだ…――?」
気になって尋ねると司は目の前で、恥ずかしそうに答えた。
「ん? ああ、ちょっとな……。昨日カヲルさんから連絡があって、お前が俺の為セーターを編んでくれた話を聞かされたんだ。でも、お前がそのセーターを窓から捨てたって話もカヲルさんから聞いたんだ」
「カヲルさんが…――!?」
「お前が相当、落ち込んでるって電話越しで怒鳴ってきたんだ。それで今日、空港に着いたら彼から電話が来て、近くのホテルのフロントに物を預けてあるから取りに行けって言われたんだ。その後、カヲルさんに教えられたホテルに行ってフロントで預けられた物を俺は受け取った。それで直ぐに箱の中を確めたらこのセーターが入っていたんだ。これを見た時驚いたよ。少しほどけていたからさ。これが今の、お前の気持ちなんだって改めて思い知らされた」
司はそう言うと少し苦笑いをした。俺はそこで何も言い返せなかった。
「一応セーター着れたけど、やっぱりほつれてるから何か可笑しいよな?」
司は目の前で笑ってハニカンだ。俺は反省して再び謝った。
「ゴメン司、本当はそれ完成してたんだ……。でも、俺バカだから…! 司に裏切られたって思って勘違いして…――!」
言葉を詰まらして話すと、司は優しく「もういい」と言って、優しくぎゅっと抱きしめてくれた。
「お前が俺にセーターを編んでくれただけでも、俺はその気持ちが十分嬉しいよ、ありがとう一希……! 愛してる…――!」
司の優しさを肌で感じると、彼の腕の中で涙を流して頷いた。
「俺も司が好きだ…! ら、来年は…来年はもっと、上手く作るから…! 司が喜んでくれるように頑張って編むから、その時はまた着てくれるか…――?」
思いきってその事を言うと、司は優しく笑って俺にキスをしてきた。
「ああ、もちろんだ! お前が編んだセーターなら、何枚でも着てやるさ。一希、メリークリスマス!」
「うん…! 司、メリークリスマス…――!」
俺も泣きながら優しく微笑むとメリークリスマスと言い返した。初雪が聖夜に降り積もる中、俺達の周りだけが暖く、冷たい雪さえも溶かしてしまうくらいの暖かい愛を2人で感じた――。
-END-
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