司と一希。

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――話しは今から二年前に遡る。司と出会う前の頃、当時17歳だった俺は、とある有名なファッション雑誌のモデルをやっていた。『南瀬リョウ』と言う名前で自分という商品を売っていた。あの頃は毎日忙しく、モデルの世界でやって行くには、まだまだ経験と実力が足りなかった。  あの頃の俺は、死に物狂いでモデルの厳しい世界を這い上がってきた。ライバルは沢山いたし、そのライバル達を蹴落としながらも俺はモデルの世界を必死で生き抜いた。そして18歳になる頃、一人前のモデルとしてやっと周囲に認められた。ファッション雑誌から一流の海外のファッションショーや、テレビCMにも起用された。そして、人気のテレビドラマの出演をきっかけに世間に俺の名前は多くの人に知られるようになった。  ファンレターなんかは毎日のように事務所に沢山届いた。こうして俺は僅か2年でスーパーモデルに登り詰めた。はじめはスーパーモデルになった事で俺自身が一番浮かれていた。街には俺のポスターや、俺が起用されている大きな広告の看板を見ると街中が俺一色に染まっている事に大きな満足感と、モデルとしての実力と達成感を得た。  それに周囲に毎日チヤホヤされて、浮かれて天狗になっていた時期もあった。そんな幸せがずっと、このまま続くんだと勘違いしていた。でも、いざ頂点に登り詰めると、その頂点から次は下に転がり落ちる事に次第に恐怖を感じた。そして、気づいた時には既に違うモデルの子が売れ出していた。
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