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8月6日(金)【12】生きていたアサガオ
「えいっ――」
「ほふっ!!」
両わき腹をギュッと押される。振り返ると白くてツヤツヤのエリカさんの顔。待ってみて正解だった。
「久しぶりだね」
「お久しぶりです」
「もうあきふみくん引っ越しちゃったのかと思った」
「すみませんでした。おばあちゃん家に帰っていたのですが、エリカさんに言うの忘れてました」
「そっか。楽しかった?」
「はい」
「それにしても顔やけたねえ」
「エリカさんは白いですね」
久しぶりのお姉さんの匂いに少し緊張する。
「髪も茶色くなってる」
「ほぼ毎日海に入っていたので、太陽のせいかな、わからないです」
「細くてやわらかい」といって、お姉さんはぼくの髪を手ぐしですく。頭皮を指でなでられると首の後ろがゾワッとした。なかなかやめないので、左手をつかんで久々のラジオ体操へと向かった。
アパートに戻ると早速、お留守番していたアサガオの水やり。
「あさがおの葉っぱの色、変わっちゃってるね」
「もう戻らないしちぎりますか」
黄色くヘナヘナになってしまった葉をちぎり、土の上に置いた。
「今日はいつもの観察日記書かないの?」
「帰ってきたらやります。今から二度寝するので」
「あきふみくん夜更かしかな? いけない子だ」
「昨日までの疲れと、あと平和登校日なのでギリギリまで寝ることにします」
「あーそんなのあったあった」と懐かしむエリカさんと別れ、布団へもぐり込んだ。
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