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「……はぁぁあ。……最高か? 神か。神なんか??」
あまりの尊さに心身共に疲れ果て、机の上に突っ伏した。
私の趣味の大半は推し活が占めている。だけど残りの部分は読書だと胸を張って言えるくらいには、本を読むのが好きだ。
だから最初の一ヶ月、執筆関係の本を読み漁って勉強した。書き慣れる為に、毎日日記を書いた。小説をまだ書けない分、推しへの愛を絵に込めた。
最後の仕上げとばかりに、推し関係の二次小説や夢小説を読み漁った。
ウェブ小説の雰囲気を掴むための努力の結果が、これである。
今まで本屋で売られているものしか読んだ事がなかった私には、ウェブ小説は衝撃の連続だった。
尊さが爆発している。
恋愛小説でキュンキュンし、ミステリーでド肝を抜かれ。ホラー小説で眠れなくなる。それらとはまた違った感覚。
そう、顔すら知らない同志達が。公式情報を丹念に咀嚼し、自らの経験と感情を織り交ぜて解釈した推しを素晴らしい文章で展開して下さるのだ。
神絵師の存在は当然知っていたけれど、こんな所にも神が沢山おられたとは思わなんだ。
愛が足りていなかった。
こんな神達の存在を知らなかった私は、親友の言う通り、全くと言って良い程愛が足りていなかったのだ。
大いに反省した私はその日から、神作品にハートやコメント、スタンプを送って。自分の愛を込めに込めて、作品を書きまくった。
神達の神作品は、私の推しへの愛と解像度を爆発的に増加させる。それらを小説へ際限なく注いで、新たな交流が広がり。同士が増えれば増えるほど、新たな神作品が沢山生まれる。
圧倒的な好循環。
幸せと尊さが限界突破している。
ただ一つ、弊害を上げるとするならば。
「……うぐっ。と、尊すぎて、死ぬ……!」
書き手の方々によって、愛が致死量を超えるレベルで込められた小説は、心臓への負荷が深刻な事。
興奮して鼻血が出る事はもはや日常茶飯事だし、堪えきれずに床を何度も転がった。がりがりと寿命を削られる音だって、もはや親友の声より聞き慣れてしまっている。
だから多分、と言うか間違いなく。私は早死するし、死因は尊死だろう。
そう訴える私に、親友は死んだ魚の目をして。
「あんたは何処に向かっているの?」
と、疲れ切った声で嘆いていた。
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