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多分、遥のことはずっと忘れられないだろうな。
遥の交友関係から完全に切られたとわかってから、やっぱり無理にでも付き合ってみればよかったと後悔したことがないといえば嘘になる。
でも、それは遥を恋愛対象として好きだからではない。自分を慕ってくれる、弟のような可愛い遥を手放したくなかったからだ。
だから、あの時はあれで良かったのだ。槙人にとっても、遥にとっても。
「くそ、おまえモテすぎてむかつくな。顔か? やっぱり顔なのか?」
「大久保さんもそこそこかっこいいですよ」
「だよなあ? ってそこそこかよ。そして暗に自分の顔がいいことを認めるな! 否定しろ! 実際いいんだけど!」
昼食の帰り、喫煙所で煙草を吸いながらスマホを見ると、神田から久々に連絡が来ていた。
『今週の金曜飲もうぜ』
今週の仕事のスケジュールを思い浮かべる。金曜は定時で上がれそうだ。
了解、と打って煙草の火を消した。
◆
「結婚!?」
突然の報告に、思わず手に持ったビールジョッキを滑り落としそうになった。
「おう。急に決まったんだ」
目の前でにこにこしている神田は、清潔感のあるオフィスカジュアルに身を包み、かつては伸ばしっぱなしだった髪も綺麗に整えていて別人のようにこざっぱりした。大学生の時より数段若く見える。
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