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「久しぶり! 先生」
両手いっぱいにサークルのビラを持った遥は、槙人の顔を見ると心底嬉しそうに笑った。
「良かった、先生もいて! 新歓スペースの地図もらったんだけどなくしちゃって、ブースの場所わからなくなったらどうしようと思ったけど、遠くから先生が見えたから良かった」
「すげえ人気だったな。てか……ちょっと雰囲気変わった?」
最後に遥に会ったのは先月、合格の報告と挨拶のため塾へやって来た時だ。
その時の遥はこれで先生の後輩になれる、と本当に嬉しそうだった。
確かに以前、映研に入りたいということは言っていたが、実際大学に入れば苦しい受験時期の象徴たる塾講師にわざわざ会いに来たりしないだろうと思っていた。
どこかの陽気なサークルに入って彼女を作って……と大学生活を謳歌して槙人のことなど忘れていくと思っていたのに、まさか本当に来るとは。
「うん。ちょっと髪染めたんだ。変かな」
照れくさそうに前髪をいじる遥は、大分垢抜けたように見える。もちろん見慣れない私服姿ということもあるが、無造作だった髪は少し短くなってワックスでセットされているし、すっかり都会的な美青年の雰囲気を纏っている。
「え、ちょっとマキ! 先生ってどういう関係!?」
「まさか友達にそう呼ばせてるんですか!? 引くわ~」
傍らで神田と里奈が肩を寄せ合ってわちゃわちゃ騒いでいる。
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