2. 先輩と後輩 春

12/20
前へ
/124ページ
次へ
「そういえば、煙草吸うんだね」 「あ、うん」  すぐに遥はいつも通りの人懐こい笑顔に戻ったので、安堵する。 「吸ってるとこ初めて見た。そういえば塾でもちょくちょく外出てたね。煙草休憩してたんだ」 「あのビル喫煙所ないからな」 「ちょっと憧れるなあ。大人の男って感じ」 「金かかるし健康に悪いしいいことないぞ。うちのサークル喫煙者多いからなんとなく周りに影響されて吸い始めたけど、おまえはやめとけよ。おれがガードしてやる」 「ほんと? じゃあお願いしまーす」  えへへと笑う遥は可愛い弟のようで、庇護欲を掻き立てられる。上級生のお姉さま方からも大人気だろうな、と勝手に映研のモテ男枠を譲る覚悟をした。 「あーっ! ハルマキ、こんな所でさぼってやがったか!」  すっかり出来上がった神田が憤慨しながらどすどすやって来る。 「ほら、早く戻れ戻れ! おまえらがいないと女の子たちが盛り下がるんだよ!」 「おまえの話がつまんないだけだろ、おれたちのせいにすんな。てかなんだ、ハルマキって」 「遥と槙人、略してハルマキ」 「勝手に変なコンビ名付けんな!」  槙人の抗議もむなしく、意気揚々と座敷に戻っていく神田のハルマキ呼び戻しに行ったぞーという声が聞こえる。どうやらすでに浸透しつつあるようだ。 「あーもう……悪いな、なんか変な風に呼ばれちまって」
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

64人が本棚に入れています
本棚に追加