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「そういえば、煙草吸うんだね」
「あ、うん」
すぐに遥はいつも通りの人懐こい笑顔に戻ったので、安堵する。
「吸ってるとこ初めて見た。そういえば塾でもちょくちょく外出てたね。煙草休憩してたんだ」
「あのビル喫煙所ないからな」
「ちょっと憧れるなあ。大人の男って感じ」
「金かかるし健康に悪いしいいことないぞ。うちのサークル喫煙者多いからなんとなく周りに影響されて吸い始めたけど、おまえはやめとけよ。おれがガードしてやる」
「ほんと? じゃあお願いしまーす」
えへへと笑う遥は可愛い弟のようで、庇護欲を掻き立てられる。上級生のお姉さま方からも大人気だろうな、と勝手に映研のモテ男枠を譲る覚悟をした。
「あーっ! ハルマキ、こんな所でさぼってやがったか!」
すっかり出来上がった神田が憤慨しながらどすどすやって来る。
「ほら、早く戻れ戻れ! おまえらがいないと女の子たちが盛り下がるんだよ!」
「おまえの話がつまんないだけだろ、おれたちのせいにすんな。てかなんだ、ハルマキって」
「遥と槙人、略してハルマキ」
「勝手に変なコンビ名付けんな!」
槙人の抗議もむなしく、意気揚々と座敷に戻っていく神田のハルマキ呼び戻しに行ったぞーという声が聞こえる。どうやらすでに浸透しつつあるようだ。
「あーもう……悪いな、なんか変な風に呼ばれちまって」
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