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「ううん、全然平気。そういえばさ、もう“先生”呼びは変だよね。なんて呼べばいいのかな」
「確かにもうおまえの先生じゃないしな。大抵マキで後輩からはさん付けって感じだけど」
「じゃあ……槙人さん」
あまりあだ名以外で呼ばれることがないので、なんだかそわそわした。しかも槙人『さん』なんて変に改まった感じだ。
「……なんか呼びにくくないか? マキの方があっさりしてていいだろ」
「だからいいんだよ。オンリーワンって感じで」
嬉しそうに遥は笑った。呼び方程度でこんなに笑うなんて、可愛いやつだ。
◆
早々に入部して勧誘活動に加わった遥の影響もあってか、今年の新入部員は例年より人数が多く、どことなく華やかな雰囲気の子たちが目に付いた。
「今年の一年はあれだな、“陽”の者たちだな」
映画マニアが少ないので神田は残念がるかと思いきや、違う風が吹いていいと満足そうだった。
そんな新入生歓迎ムードの四月が過ぎ去り、五月も終わりに近付いている。
絶賛就活中の槙人は日々面接に追われている。早い学生はもういくつも内定を獲得しているが、槙人はいまだゼロだ。毎日のように送られてくる定型文のお祈りメールを見るたび気分が落ち込むものの、基本的に楽天家の槙人はそれほど気にしない。「受かればラッキー」くらいの気持ちで臨んでいる。
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