2. 先輩と後輩 春

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 ちょうど昼時を挟んで面接が入っていたので、遥を昼食に誘ってみたところ、一瞬で返事が来た。「りょーかい」という一文と、目を輝かせた犬のスタンプ。遥にそっくりだ。 『喫煙所にいるから授業終わったら来て』  午後の面接がある企業のオフィスと大学は歩いて十分ほどの距離なので、大学の近くで食べることにした。ちょっとした隙間時間に講義に出たり印刷室で履歴書や資料を印刷できるので、都心のキャンパスは何かと便利だ。  屋外の喫煙所はスーツ姿の学生が多かった。皆どこか疲れた顔をしている。五月の陽気にリクルートスーツ、終わらない面接準備に果てしないお祈りメール……皆就活という戦争を戦う同志だ。  一本目を吸い終わる頃、喫煙所のガラスの出入口の向こう側で手を振る遥の姿が見えた。  何人かの女子たちと何やら話している。槙人も見覚えのある顔がいくつかあるので、映研の一年生たちだろう。不満げに何かを訴えているようで、遥は手を合わせて申し訳なさそうにしながら、彼女たちを振り切って喫煙所に入ってきた。  間もなく槙人に気付いて手を振る。 「ごめん、お待たせ!」 「いいよ。なんか話してたみたいだけど大丈夫?」 「あー、なんでもない。それより何か食べたいのある? この後面接ならニンニク系はやめた方がいいよね」 「じゃあカレーは? こないだ行こうとしたら閉まってたスープカレー屋とか」
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